海外で勉強して働こう

これまでずっとなるべく言わないようにしていたのだが、もう平たく/明快に言うことにしました。
1)日本はもう立ち直れないと思う。
だから、
2)海外で勉強してそのまま海外で働く道を真剣に考えてみて欲しい。

これまでは、1)は言わずに、2)だけ言ってきた。で、「海外で働く」の中でも、私が知っている「シリコンバレーで働く」ことの楽しさ、働くための方法をなるべく具体的に紹介するようにしてきた訳なのであるが、前半も言うことにしました。その理由は、若い人に早く気づいて欲しいから。年を取ったら駄目、というわけではないが、扶養家族が増えて、引退までの年数の方が働いてきた年数より短くなってきたりすると、みるみると進路変更は大変になる。ところが、多くの人が「もはや国内に機会はない」と気づく頃には、そういう「進路変更大変状態」になってしまっていることが多い訳です。

というわけで、明言することにした次第。

(後日注:アメリカに行け、と言ってる訳ではない。シリコンバレーに来い、と言ってる訳でもさらにない。タイトルで書いた通り「海外で」。伸びてる場所を海外に見つけよう、という話しです。中国でもインドでもベトナムでも、金のわらじで「伸びてて自分に合った場所」を探しましょう、と。念のため。)

今の私が考える、日本の20年後ぐらいの将来はこんな感じだ。

  • ベストケース:一世を風靡した時代の力は面影もなく、国内経済に活力はないが、飯うま・割と多くの人がそれなりの生活を送れ、海外からの観光客は喜んで来る(フランス型)
  • ベースケース:貧富の差は激しく、一部の著しい金持ちと、未来に希望を持てない多くの貧困層に分離、金持ちは誘拐を恐れて暮らす(アルゼンチン型。あの国も19世紀終わり頃には「新たな世界の中核を担うのはアメリカかアルゼンチンか、と言われたほどだったんですけど・・・・)
  • ワーストケース:閉塞感と絶望と貧困に苛まされる層が増加、右傾化・極端で独りよがりな国粋主義の台頭を促す。

ワーストケースになると、日本の外にいてもとても怖い。日本は人口も多いし(20年後7000万人になってもまだイギリスより多い)、集団行動をすることにかけては世界で最も優れた民族である。なんだかんだ言って軍事力だって大いにある。大量の優秀な人たちが間違った方向で一致団結したら何が起こるか。アルカイダですらアメリカ本土攻撃できちゃうんですから。あと、怖いだけでなく、日本で生まれたものとして悲しい。なので、是非これだけは避けて欲しい。

というわけで、なんとかせめてベースケース、できればベストケースに至って欲しいわけです。

そのためには、「閉塞感」が少なくなるとよいかと。日本国内の閉塞感が打破できないなら海外に行けばよいではないですか。

(会社レベルで海外とのチャネルを強化する、というのも組織レベルでの閉塞感を小さくする一つの方法だと思うので、そこは仕事で細々とサポートし続けていたりはする。)

とはいうものの、海外でいきなり就職するのは大変だと思うので、まずは留学してそのまま居残る、というのが楽なわけです。この方法には、「留学したけど、やっぱり日本の会社で働きたい」という時は、日本に戻って就職すればよろしいだけ、という利点もある。ま、全員が全員そうとは言わないが、大抵の場合、同じ個人に関して言えば、留学経験がある方が就職も優位になるので、特に20代の人だったら失うものはまずない。

(こういうことを言うと、「日本で大学に行けないから、海外の大学にいったような人は、帰ってきてもまともな仕事がない」などという人もいるが、そういう人は元々日本で就職しようとしても難しかった訳で、それよりマシになるんじゃないでしょうか。)

今の日本は、「成功体験のある人」が著しく減ってしまった。高度成長は1955年から73年なわけだが、この時代を経験した人の殆どはもう引退してしまっているわけです。80年代のバブル期にバリバリやっていた人たちは、その後の失われた20年で「やっぱり間違ってたかも・・・」という自信喪失に陥った世代。

「組織や経済が力強く根元から明らかにうまくいく」というのは、「イマイチ駄目だ」「どれだけがんばっても現状維持」という状態とは圧倒的に違う。しかし、日本にはこの「うまくいく」という状態がどういう状態なのかを知っている人が本当に少なくなってしまった。しかし、大きな成功を生み出すには小さな成功の積み重ねが大事だし、苦境に陥っても自分の判断を信じてぐっと堪えて打って出るためには「成功体験」に裏打ちされた自信が大事。

そして成功体験をするためには、成功している場所にいくのが一番。

「海外で成功経験を積む」人が増えることは、日本のためにもなる。シリコンバレーにはインド人や中国人がやたらといる訳だが、インドや中国から見るとbrain drain(頭脳流出)が起こっている訳ではなく、brain circulation(頭脳還流)が起こっている、というのはUC BerkeleyのAnnaLee Saxenian教授の研究結果な訳ですが、飛行機でどこにでもさくっと行ける今日この頃では、「二つの国を行ったり来たりしながら働く人」というのも沢山いる。

+++

もちろん、上述した通り、日本は貧富の差が広がりつつあるし、今後もどんどん広がると思うので、「日本で勝てる!」と思う人は、是非国内でその道を邁進してください。誘拐には気をつけてね。

あと、「日本の政治を根本から変えて日本を良くする」という自負のある人も是非日本でトライして欲しい。

(追記:あと、「逃げ切れる世代」っていう人もいますね。今の20代は無理だと思うが。)

私はこれからも「それ以外の人」向けのメッセージを細々と出し続けたいと思います。

[4/30/09]国や組織はどういうときによくなるかというフォローアップエントリーも書きました。

[1/11/10]皆さんから寄せられた「海外で働く体験記」を以下の通りまとめました。

海外で働く体験談集:アジア編

海外で働く体験談集:オセアニア・中近東・南米編

海外で働く体験談集:ヨーロッパ編

海外で働く体験談集:アメリカ編

海外で勉強して働こう」への177件のフィードバック

  1. 「日本はもう立ち直れない」のか?

    ヤフーのニュースを見ていたら、
    「日本はもう立ち直れないと思う」というブログを書いて、話題になっているそう。
    http://www.chikawatanabe.com/blog/2009/04/future_of_japan.html
    シリコンバレーで「On Off and Beyond」というブログをやっておられる渡辺千賀さんが「海外で勉強して働こう」という趣旨で書かれたもののようで、沢山のコメントが付いています。
    海外に住む日本人として、ちょっとこの話に乗っかってみようかと思…..

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  2. これまでの出来事。へたくそ写真館と円周率。車内温度。言いたい放題

    火曜日の夜に国見の深山神社に写真撮りに行きました。ちと,時間も掛かって道も間違えて着いたのは着いたけど,懐中電灯で照らして見たけどちと早いと思った。
    結局,写真は撮らずに「チャリ−ン。ガラガラ。ポンポン」と,お参り。
    その後は115号線を通って道の駅裏磐梯に。
    ……

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  3. 日本という市場の市場性

    さらに構造上上の世代が重い、かつ既得権益にしがみつく傾向の強い(これは別にどこと比べた訳ではなく個人的な感想です)国にすんでいる、若い、これからの、働いている人間に「未来を見ろ」っていわれても「だって見たって何にもないじゃない」っていう答えが容易に想像できますよね??
    … 結局ぼくらみたいな20代、30代が今回の記事を読んで「たしかにそういう面もある、だから明日から俺は●●をやろう」と決めれる人・国は強いし、そうじゃない国は・・・という事な気がしています。

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  4. もう群れるのをやめたら?

    未曾有の金融危機に、北のミサイル発射実験、豚インフルエンザの流行。不穏な現象は重なり、あちらこちらでその痛みが露出してきている。社会全体に暗澹とした雰囲気、閉塞感が立ち込めて、何かがいま起ころうと、あるいは終わろうとしている。 下手な週刊誌の書き出しだと…..

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  5. [コラム]「怪物」とどう共に生きるか

    海外で生活するひとりの学生として最近はてな村住民の間で話題になっていた渡辺千賀さんの「日本はもう立ち直れないと思う」という発言や、池田信夫氏の「希望を捨てる勇気」といった記事を読んで、自分なりの考えをまとめていた。 すごくミクロなコメントだけど、自分は自…

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  6. 海外で働くこと

    ”これまでずっとなるべく言わないようにしていたのだが、もう平たく/明快に言うことにしました。 1)日本はもう立ち直れないと思う。 だから、2)海外で勉強してそのまま海外で働く道を真剣に考えてみて欲しい。” というコメントについて、どうしても自分は納得しない・・。 ”日本がだめだから海外に行こう!”というのは、どこかアングロサクソン礼賛主義(六本木にたむろっているバカな日本人女と同じメンタリティーか)な響きがして、どうも賛成できない。 外資系で働いている身なので、あまり大声でいえる身分ではないが・…

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  7. 自分なりの日本脱出論

    ニートの海外就職日記さんが東大卒才女の挑発的なw「海外脱出のすすめ」。という記事を書いている。最近更新が活発でファンとしては嬉しい限りだ。この記事ではとあるアメリカ在住の女性の記事を扱っている。で、その女性の記事というのが海外で勉強して働こうという記事。後……

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  8. [雑感]日本に失望する

    今の日本は、「成功体験のある人」が著しく減ってしまった。高度成長は1955年から73年なわけだが、この時代を経験した人の殆どはもう引退してしまっているわけです。80年代のバブル期にバリバリやっていた人たちは、その後の失われた20年で「やっぱり間違ってたか…

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  9. 敗戦の将を目指すか○○まくって逃げるか

    わたしも前から思っていたこと(本当です)を言葉にして、
    公に示す人がいたので、どきっとした。
    ————————————————————-
    海外で勉強して働こう
    これまでずっとなるべく言わないようにしていたのだが、もう平たく/明快に言うことにしました。
    &#0……

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  10. 日本を捨ててどこへ行く

    「日本を出て海外で働こう」と勧めるシリコンバレーのコンサルタント女史の記事が、先週話題になりました。
    しかしこの主張には、日本人として到底首肯できない、いや、人としてな…

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  11. [雑記]日本が終わっているとかどうとか

    On Off and Beyond: 海外で勉強して働こう 正直、ネイションとしての日本にはわたしは興味がないので、日本が自分にとって快適な生活と仕事の場を提供してくれるのかどうかが問題になる。 ただ、快適さと安楽さは違うものだし、日本はとても安楽に生活できる国ではあるもの…

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  12. 「日本の労働環境はクソ過ぎる」 だから「日本でリーマンしないで喰って行こう」。

    さて、実は金曜は有給で休んで、しかも土曜が祝日なんだけど、今の会社は月曜が振替休日になるので今週末は4連休!写真いじったりしてのん…

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  13. おいらも日本はもうダメだと思う

    「日本はもう立ち直れない」 だから「海外で働こう」に賛否両論
    スレにも貼ったけど海外で勉強して働こうというブログのエントリがずいぶん注目されている。さらにはYahooでも取…

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  14. 海外から日本を

    これを読んで、日本の行く末を真剣に考えさせられた。
    これまでずっとなるべく言わないようにしていたのだが、もう平たく/明快に言うこと…

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  15. 日本はもう立ち直れないとは思わない。日本は日本であって日本でなくなるから。

    渡辺千賀さんの「On Off and Beyond」で、「海外で勉強して働こう」というエントリーが一部で話題になったと聞いた。
    彼女は、「日本はもう立ち直れない」から、「海外で勉強してそのまま海外で働く道を真剣に……

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  16. 渡辺千賀「海外で勉強して働こう」&池田信夫「希望を捨てる勇気」

    シリコンバレーでコンサルティング会社を立ち上げて技術関連事業での日米企業間アライアンスと先端技術に関する戦略立案を行う事業を展開されている渡辺千賀さんという方がいて、彼…

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  17. 渡辺千賀「海外で勉強して働こう」&池田信夫「希望を捨てる勇気」

    シリコンバレーでコンサルティング会社を立ち上げて技術関連事業での日米企業間アライアンスと先端技術に関する戦略立案を行う事業を展開されている渡辺千賀さんという方がいて、彼女のブログ『On Off and Beyond』[http://www.chikawatanabe.com/blog/]はしとらすも時々目を通しているのですが、4月27日付のエントリーがネット界隈で大きな反響を呼んでいるようですね。
    →2009/04/27 「海外で勉強して働こう」
     (上記エントリーのフォローアップとして、2009…

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  18. 日本はもう立ち直れないのですかっ!?

    日本はもう立ち直れないのですかっ!?
    なんとか80位くらいにいます→→→
    ベストケース:一世を風靡した時代の力は面影もなく、国内経済に活力はないが、飯うま・割と多くの人がそれなりの生活を送れ、海外からの観光客は喜んで来る(フランス型)
    ベースケース:貧……

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  19. 【本】グローバルリーダーの条件―ダメになっていく日本を救うために自分がグローバル人材になるという道もある

     
    うがった見方をすれば、これは大前さんと船川さんがやっているビジネスブレークスルー大学院大学の英語講座の宣伝本なのかもしれませんが、私の今の問題意識とシンクロ度が高く、このblogでも紹介させていただこうかと思った次第。
    『グローバルリーダーの条件』
    ……

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  20. ネット上にある傾向が目立つ(2)

    ネット上のある傾向は続いていた。 経済学者である池田信夫氏の「希望を捨てる勇気に始まり、シリコンバレー在住の渡辺千賀氏の「海外で勉強して働こう」と続き、両氏のコメント欄は大いに盛り上がっていたが、その辺のことは以前に書いた。 2009年04月29日 ネット上にある…..

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  21. 「海外で勉強して働こう」にちなんで

    時折お邪魔する、シリコンバレー在住、渡辺千賀さんの「On Off and Beyond」というブログで「海外で勉強して働こう」というエントリーを拝見しました。タイトルの通り、海外に留学して海外で働くことを特に若い世代の読者さんに勧めているエントリーなのですが、その中で以下…..

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  22. 人材の海外流出を防ぐには?

    3カ月ほど前の渡辺千賀さんの「海外で勉強して働こう」エントリーの後起こった数々の議論の中に、「日本の英語教育が役に立たないのは、日本人が海外に逃げないようにするための政府の陰謀だ」というコメントを読んだのですが、その真偽はともかく、それと全く反対のことが起こっている国がありました。 以下、シンガポール政府上級官僚がある……

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  23. オフショアを推進するSIerは今すぐ腹を切って死ぬべき?

    そうか。そうだったのか。
    最近感じていた違和感が解けた。
    この人達は、、、
    On Off and Beyond: 海外で勉強して働こう
    404 Blog Not Found:日本に留まりたかったら、一度は留学しておくべき
    フランスの日々: 日本をもっとダメな国だと思い危機感を煽りましょう
    …….

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  24. 【絶望こそがスタートライン】書評No.034 希望を捨てる勇気 停滞と成長の経済学 池田 信夫 (著)

    希望を捨てる勇気―停滞と成長の経済学クチコミを見る池田信夫blogを最近読み始めた僕にとっては、題名からしてとても興味をそそられる本でした。拙著がきょう発売された。アマゾンの予約だけで重版になった。渋谷のブックファーストで見ていると、手に取るのは圧倒的に若者…….

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