マルチリンガルSNSのXIHAはインターネットの国の壁を越えられるか

インターネットさえあれば世界中に簡単にリーチできる、と言われるが、世の中はそんなに甘くない。

ソーシャルネットワークを見れば明らかだが、なぜか特定の国や地域に片寄って人気がでる。Boboはイギリス、Orkutがブラジル、というのは有名だが、SNSのはしりとして一世を風靡した後、結局アメリカでは尻つぼみになってしまったFriendsterもその後なぜかフィリピンを中心とした東南アジアで大人気に。どれもアメリカ発の事業なのに、なぜかそういうことになってしまったのでした。

そしてこれは、広告モデルの事業では非常に頭の痛い事態でもある。

シリコンバレーの会社のサイトに、フィリピンからのページビューが何十億とあったとする。どうやって広告を取ってくるのか。マニラに支店を作るのか。Friendsterは、フィリピンに加えて、シンガポールとインドネシアとマレーシアでも人気なのだが、他の3つの国向けの広告はどうするのか。

結構大変だ。

もちろん、解決可能な課題ではある。Friendsterは、ついに覚悟を決めて「アジア向け事業としてきっちり育成する」とし、新たに$20 million集めてマネジメントも雇った。今年の8月のこと。

しかし、SNSという言葉がまだ普及していなかった2003年にFriendsterの人気が出て、その後いろいろなトラブルでMySpace等に取って代わられ、もはや過去の遺物と思われながらなぜかフィリピンのインターネットユーザーの60%がメンバー?という不思議な事態が生じたのが2006年。そしてさらにアジア向け事業としての戦略に基づく資金調達まで2年かかっているわけです。

(ワタシの2003年のブログエントリーでは、Friendsterのことを「SNS」ではなく「出会い系」と呼んでいて我ながら興味深い。)

何で特定の国や地域だけで人気が出るという事態が生じるかといえば
1.言語の違い
2.カルチャーの違い
当たり前ですが。

言語の違いはかなり決定打的。たとえばアラビア語がずらずらと並ぶチャットサイトを見て

「お、楽しそうだから私も参加しよう」

と思う日本人はまずいないと思います。私は「もしかしてテロリストの連絡サイト?」と思ってしまったアルですよ。同様に日本語がずらずら並ぶサイトにあえて入ってこようという英語スピーカーはいないかと。ということで、一旦特定の言語で人気が出ると、他の言語の人はめっきり入ってこなくなる。

カルチャーの違いは言語よりは微妙ではあるが、たとえばBobo。アメリカもイギリスも英語なわけだが、イギリスだけで人気が出てしまった。結局、国が違えば、興味の方向や、共通の認識などシェアできるモノが違うわけで。わかりやすいところでは芸能人。イギリスではKatie Priceという元トップレスモデルのマルチタレントが大・大・大人気らしい。がアメリカでは誰も知らない。イギリス人がKatie Priceの話で盛り上がっている場にアメリカ人は入れないし、入りたいとも思わないわけです。

というわけで、「ネットワーク効果で人が増えるほど人気が増す」というタイプの事業では、特定の国・言語で人気が出ることが、他の地域でのマーケティングでは致命傷となる可能性が大いにあるわけです。

ここでやっとXIHA。フィンランドが本社で先月アメリカでもローンチした。「多言語を話す人のためのSNS」ということで、

1.サインアップ時に自分の言語を複数特定できる。そのうち一つを「メイン言語」とすると、それ以降サイトメニュー等は「メイン言語」で表示される
2.ブログもあるが、これも「記入言語」を指定
3.自分が選んだ言語のブログだけが表示される

という仕組み。つまり、知らない言語は見えなくなる。これ大事。

・・・・ではあるのだが、ちょっとだけ使ってみた感じではまだまだ多言語の扱いに工夫は必要で、複数の言語でブログを書きたい場合、それぞれの言語ごとに違うブログを作らないといけないのであった。少々面倒。

その上、たとえば「英語」と指定したブログであっても、日本語で記入すると記入できてしまう。しかし言語指定は「英語」のままなので、英語ブログとして日本語がわからない英語スピーカーにも見えるようになる。

また、途中で言語指定を変えると、昔のブログの指定言語もまるごと新しい言語になってしまう。

ということで、「英語」と「日本語」しか指定してないのに、中国語のエントリーとかが見えてしまう結果に。これは「英語」指定で書かれた「中国語」のエントリーがあるせいですな。

とはいうものの、大まかにはちゃんと英語と日本語のエントリーだけが出てくるようになっていて、まぁまぁ合格点。今のところまだ月間ユーザーが50万人とSNSとしてはゴマ粒のように小さいが、アメリカだけで複数の言語を話す人は3700万人ということで、あとはこの手のマルチリンガルな人をどれだけ惹きつけられるか。興味深いところではあります。

マルチリンガルSNSのXIHAはインターネットの国の壁を越えられるか」への6件のフィードバック

  1. ちょっと趣旨は違いますが、逆に多言語にブログを展開できるlang-8というのが一部で流行り始めています。自分の挑戦したい言語の添削をlanguage exchange風にやってもらうところです。こうすれば、自分の使いたい言語でそこそこスムーズにSNSが展開できます。

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  2. Xihaのサイトには
    XIHA means ‘fun’ or ‘happy’ in Mandarin, and also ‘Hip-Hop’ in Cantonese
    とあるので、シーハーでしょう。フィンランドの会社ですがw
    lang-8の喜さんたちお会いしましたヨ。相互言語添削、ですね。あれはいろんな言語を同時にプロモートするのが大事ですね。でないと、添削してもらえない言語が出てきちゃいますから。

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  3. 『 「英語」と指定しても、日本語で記入できてしまう 』…というのは、『 「英語」メインで書いている時にでも、日本語について書きたい時には、日本語=漢字が使える 』…ということで「利便性」のうちの一つだと思いました。(日本語のテキストエディタで、中国語簡体字などが使えないものがありますが、それは中国語も扱いたい人にとっては不便です)

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  4. いろいろありますねー、SNS。
    私の周り@シンガポールでちょっと前に話題になったのは、InternationsというSNSで
    the first international online community for people who live and work abroad
    だそうです。
    自分の住んでいる国のコミュニティーに自動的に所属し、それぞれの国にボランティアのAmbassadorなる人がいてdrinksやeventを開催したりしています。
    誰も知り合いのいない国に引っ越すことになったときとか便利でしょうね、アパート探したりするclassifiedsとしても使えるし。
    ただ、私も1回だけdrinksに参加したことがあるのですが、さすがに「シンガポールに住んでいる外人です」というのだけが共通点で盛り上がるのは無理がある気が・・・
    わりとリアルでのコミュニケーションを主体に置いているSNSでした。

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