前々回のエントリーの続き。Bear Stearns救済措置までの6日間の動きの速さにびっくり、という話でしたが、今回は、救済措置が発表された後の「心臓に毛が生えている話」です。
まず背景ですが、Bear Stearnsの株は、2007年1月には170ドル超だったのが、「やばそう」という昨今のニュースで政府介入直前の3月14日金曜の終値は30ドルにまで下がったのでした。そして日曜に発表されたJP MorganによるBearの買収価格は一株当たり2ドル!1日ちょっとで企業価値が9割以上消滅。(ちなみに、3月12日の水曜でもまだ60ドルあったので、それに比べたら97%減。)
私が驚いたのはその後でございます。
神の見えざる手に大幅に依存するアメリカ政府が、前代未聞の介入をしてやっとのことで救われたBear Stearns(・・・っていうか、救われたのはBear Stearnsにお金を貸していた人たちだが・・)。
しかし、なーんと政府介入の発表された翌月曜、Bear Stearnsの株の終値は5ドル近く、さらに翌日の火曜には7ドル近くまで上がったのでした。
・・・だから「2ドル」って言ってるのに!?
投資家の皆さんは
「いくらなんでも2ドルは安過ぎ。株主訴訟は免れない。きっとJP Morganは買値を上げる」
と思われた模様。
「JP Morganは濡れ手に粟」
という市場の見方を裏付けるように、JP Morgan側の株はディール発表の翌日10%上がったのでありました。
でもなぁ、市場稀に見る政府の大介入でやっとの思いで助かった会社の買収価格が上がるなんてことあるのか、と、メディアでも懐疑的なコメントがあちこちで聞かれ。
・・・しかし、3月24日には「10ドルまで買値を上げる」との発表が。
ううむ、そうか。
しかし株価は今度は10ドル「超」で推移。まだ上がると思われている様子。
・・・・ところがそこで思わぬ伏兵が。Bear Stearnsのチェアマンが、25日火曜に全持ち株を売り払ったのであった。トータル6100万ドル、一株当たり10ドル84セント。このニュースが流れると、
「チェアマンですらこの辺が限界と思ってるわけね」
とさすがにその日のBear Stearns株は5%値下がり。
***
といったことが、政府介入発表後10日ほどの間に起こったわけです。前代未聞の介入でこの世の終わり感じている暇もなく、数多くの世の投資家が我先にBear Stearnsの株を買い、JP Morganの株を買い。
そして、責任を感じるべきBearのチェアマンは全持ち株を売り抜ける。(まぁ、ほんの10日前には6倍で売ることもでき、さらに去年の頭には持分は10億ドル(1000億円)を超していたことを考えれば、本人的には「はした金で買われた」と怒り心頭なんでしょうが、それにしてもねぇ・・・。)
これぞ心臓に毛が生えている、と思った次第です。
***
ちなみに、アメリカの賃貸マンション(アパート)を運用する不動産投資信託(REIT)は今年に入って景気良く値上がりしているようです。3月27日時点で、今年になってから平均15%強上昇。
住宅バブル崩壊で持ち家を失う人が増える
↓
賃貸需要が増える
という見込みによるもの。
そういえば、ハリケーン・カトリーナ直後のニューオリンズの不動産はほんの数日で一様に値上がり、数ヶ月で平均20パーセントも上がったそうな。多くの住宅が住めない状態になったため、残った住宅の需要が増したわけです。
(余談ながら、同じ理由で、来るべき関東大震災に耐えられるつくりの都心の住宅は、大いに「買い」だと思ったり。)
以上、どんな時でもたくましく生きるべきなのね、という話でした。
心臓に毛がないと、荒波には耐えられそうもないです。
横で見ている分にはいいですが、当事者となると圧倒されて、何もできないです。
チェアマンの行動は、日本の頭取の比ではない。やるなって感じました。
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個人的な経験ですが。
BSC、、、60ドルで空売りした翌日の爆下げ30ドルで(儲けたくせに)心臓が縮こまり、手仕舞いしました。きっと次は爆上げだな!でも怖いから買わんとこ~なんて思ってたら週明けはなんと3.6ドルでした。
経験的に爆下げの後は調整が入るはずなので、(E-tradeとかもそうだった)4ドル位で買おうかなと思うも、2ドルになると大損なのでやめときました。VMWの決算日に心臓が凍りついた経験があったので・・。最終的に14ドルまで行っちゃいましたが(笑)、まさに心臓に毛が生えてないと取れないディールですねぇ。
結果的に一番の戦略は年末に「すべて手仕舞い」でした。
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「サブプライム関連なんて所詮、最初から勝ち逃げ必須の金融商品」って感じで、金融業界で当事者意識を持ってる人なんていないんじゃないですかね(笑)
熊の頭取はババを引かされたくらいにしか思ってないのでは。
本当に恐るべしなのは各社が巨大な損害をこうむる前に、そこから脱していた↓ゴールドマン(っていうか事の発端の仕掛け人?)。
http://moneyzine.jp/article/detail/15940
日本もバブル崩壊で得た教訓を生かして波に乗っておくべきでしたね。
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千賀さんのブログを読ませて頂き一人頷くことの多い日々です。
今回のBear Stearns救済措置及び株の値動き、特に会長の自社株
放出劇は米国ならではの動きで驚きです。
英国でもNorthern Rock銀行の国有化等で大揺れの欧州で、ここ
ドイツでもフランクフルト証券取引所の値動きは乱高下を続けています。
また僕等の受注活動でもピークアウトを迎えた感ありです。
スペイン、イタリアがユーロ高の影響で景気が失速、ECBは政策金利
据置き、BOEは追加利下げに積極姿勢。
欧州でもスタグフレーション警戒感が高まりつつあり、底堅かった
ドイツ経済もユーロ高と金融不安で揺れ始めている感じです。
これ以上の金融市場の混乱が実体経済に悪影響を及ぼさぬよう
切に願うばかりの今日この頃です。
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買収価格というのは、金融派生商品で言うところのオプションと考えると分かりやすいと思います。つまりJPMがベアーの株を2ドルで買うと言ったのは、最低でも2ドルの価値があるということであって、それより高い価格で他の人が買収するかも知れない。シティバンクが日興を買収する時も似たような感じでしたよね。
今回のベアー買収については、FRBが直前で危機に気づいて対処ということになっていますが、個人的には本当にそうなのかなあ、と思います。つまり、倒産していない会社に公的資金を投入するのは、モラルハザード(という名前の国民感情)の観点から認められない。経営陣は少しでも長生きしようと無理をする。でも、本当に倒産してしまったら金融市場が混乱する。いずれにしろ、倒産ぎりぎりの時点で、エクイティの価値を限りなくゼロに近づけた上で、デットに関しては金融市場の信用秩序維持の目的で公的資金を投入する、という方法しかなかったのだと思います。買収価格引き上げにFRBが難色を示したのも、公的資金注入の建前論なのでしょう。バーナンキは、「今回の例はあくまで特別で先にも後にも同様の例はないことを願っている」と言っていますが、分かりやすく言うと、「破たん金融機関の処理スキームは今回のように緊急事態として対処する以外、政治的にありえません」ということではないでしょうか。
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