アメリカの金融界は心臓に毛が生えているという話

先週は、アメリカ金融界が上を下への大混乱であった。私の感想は

1.すごい瞬発力
2.アメリカの金融コミュニティは心臓に毛が生えている

3月11日火曜から16日日曜にかけてはくるくるとめまぐるしく状況が変化(ここが瞬発力)、16日以降は、その変化のさらに裏をかこうとする人たちの躍進(ここが心臓に毛)が目立ったのでした。

1.まず瞬発力の一週間

こちらのWall Street Journalの記事によくまとまっています。さすがWSJですな。要約するとこんな感じ。

11日火曜:投資銀行への政府緊急融資2千億ドル(20兆円)を決定。これで一息、と思いきや、サブプライムでヤバイ橋をたくさん渡った全米第五位の投資銀行、Bear Stearnsの信用不安が広がる

(でも、Bear Stearns側は、「割とよかった今期の業績」の発表間近、と結構うきうきしており、信用不安の噂はBearの株をショートしているヘッジファンドの陰謀だし、、、とか思ってたらしい。CEOは、暢気にフロリダでメディアコンファレンスに参加中。)

13日木曜:事態は急転、$17 billionあったBear Stearnsの現金資産がたった2日で$2 billionまで減少。倒産は免れない、とFederal Reserve(アメリカの中央銀行です)に報告。Federal ReserveがBear Stearnsの資産の精査に入り、数百人が殆ど不眠不休で帳簿をめくることに。

14日金曜:国からBear Stearnsに28日間の緊急貸付を行うので、その間にBear Stearnsを買収してね、とFederal ReserveがJP Morganと話をつける。JP Morganは由緒正しい投資銀行なり。JP Morganは16のチームを作り、Bear Stearnsのデューデリジェンス(審査・精査)を開始。これで一息ついた、とFederal Reserveも安心。

15日土曜:Federal Reserveのチェアマン、Ben Bernankeがあちこちの銀行の頭取に電話で話した結果、「28日間の緊急融資」などという悠長なことでは他の銀行のBear Stearnsへの不安は収まらないことが判明。このまま週があけて金融市場が開いたらとんでもないグローバル連鎖金融不安になると判断、JP Morganに「24時間以内にBear Stearnsを買ってくれ」と依頼。JP Morganは(殆ど)不眠不休でデューデリ。

16日日曜:JP MorganとFederal Reserveのネゴの末、Bear Stearnsの損は300億ドル(3兆円)まで国が保証することで、JPのBear Stearns買収が決定。週明けに、日本の市場が世界で最初に開く前に発表。

・・・・すごい馬力だ。ひょえーですな。一旦金融不安のグローバルな悪の連鎖が始まったら止まらない、という理解の元、前代未聞の介入の嵐なわけです。

(余談ながら、金融界と言うのはオーソドックスなユダヤ人も多そうで、彼らは安息日の土曜には働けないはずなのだが、そういう人はいなかったんだろうか、、と疑問に思ったり。やっぱり安息日でも働ける結界がWall Street周辺にはあるのでしょうか。ユダヤ結界については、「パロアルト市、釣り糸でユダヤ結界化」というエントリーをご覧あれ。)

ちなみに、Federal ReserveチェアマンのBen Bernankeの専門は、1929年に起こった「世界大恐慌」なのであった。数々の論文をものしている。

世界大恐慌は、このせいで日独伊の全体主義を招き、第二次世界大戦のきっかけとなった恐るべきできごと。当時アメリカの大統領だったフーバーが「国家は市場・産業に不介入」と放任したため滅茶苦茶になった。

それを研究し尽くしたBernankeならではの、強引なまでのスーパー介入と言えるでしょう。これまで、神と崇められたグリーンスパンの後釜でなんとなく影の薄かったBernankeですが、その実力が最大限に試される時が今。しかし、このタイミングで世界大恐慌の専門家をFederal Reserveのチェアマンに据えるとは、知っていたのかアメリカ、って感じですなぁ・・・・。

長くなってしまったので、心臓に毛が生えている方の話はまた後日。(どっちかっていうと、こちらの話の方が個人的は興味深いんですが。)

アメリカの金融界は心臓に毛が生えているという話」への7件のフィードバック

  1. 日本には、護送船団だの、決定の過程が不透明だの、株主の権利を無視しているだのと非難するのに、やっている事は一緒だ。
    確かに、心臓に毛が生えている。
    日本で言えば、日銀特融?瞬発力については、標準でしょう。
    それより、1日で激変なんて能天気に馬鹿すぎる。自社の状態を理解していなかったって事だ。
    エンロンだかの時も、同様な話がなかったか?

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  2. Chikaさん、はじめまして。
    いつも楽しくブログ拝見しいます。
    BSおよびアメリカ金融界のお話、とてもわかりやすかったです。今までいくつかのNewsを読んでいたのですが、情報がころころ変わり、いまいち??だったのですが、Chikaさんの説明ですっきりしました。
    それにしてもBen Bernanke、すご過ぎ。う~ん。。。
    次回の心臓に毛が生えている方の話も楽しみにしています。
    ユダヤ人といえば、私の住んでいるモントリオール(カナダ)は北米でNYについでユダヤ人の多い街です。
    NY.モントリオールともご当地のベーグルを誇りにおもっておりまして、どちらがおいしいか、というベーグルコンテストをやったそうです。そうしたら、モントリオールのベーグルがおいしい、と認定されたそうです。ちなみにモントリオールベーグルは蜂蜜を混ぜ込むのが特徴です。
    そういえば、私の知り合いのユダヤ人も、NYに住んでいる親戚の家に行くときに、必ずお土産にモントリオールベーグルをリクエストされるそうです。
    以上、ユダヤにちなんだ駄話でした。

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  3. 政府介入が入っていたとは興味不足で知りませんでした。だから日本の株価も激下がりしてたんですね。アメリカの人は借金を信用と思ってると聞くので反動も大きそうですね。日本ならもうちょっと対策に時間かかりそうなきがしますね

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  4. >神と崇められたグリーンスパンの後釜でなんとなく影の薄かったBernankeですが、その実力が最大限に試される時が今。しかし、このタイミングで世界大恐慌の専門家をFederal Reserveのチェアマンに据えるとは、知っていたのかアメリカ、って感じですなぁ・・・・。
    不動産の暴落は日本のバブル崩壊を目の辺りに見ているから
    という理由もあります。
    そういえばグリーンスパーンも就任直後、ブラックマンデーを
    体験していますね。FRB議長が交代したから金融不安になったわけではないにしても。
    >世界大恐慌は、このせいで日独伊の全体主義を招き、第二次世界大戦のきっかけとなった恐るべきできごと。
    日本だけの視点で見ているとなかなか解かり辛いものです。

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  5. 著書を拝読しました。
    紹介されていたMegan’s LawやCIAのサイトを見て
    アメリカ留学時代にトリップしました。
    住んでみないとわからないアメリカ。
    今はアメリカ企業の日本法人で働いていますが
    知れば知るほど謎の国ですわ。

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  6. 世界大恐慌から第二次世界大戦に至った背景にはブロック経済という当時の敵対的な経済システムが主因ですが、今回の金融不安から想定される顛末は時代が異なるので、そこまで大げさなものではない気がします。
    国際間での民間金融に蔓延している取り引き不安と急激なドル安による混乱を嫌っての政策という側面が大きいのではないでしょうか。
    ゴールドマンサックスは無傷に近い状態とか言われているようですし。
    サブプライムのように破綻が明らかな勝ち逃げ金融商品は政府の規制監督が不可欠・・・というところで↓の動向に期待したいと思います。
    http://www.nikkei.co.jp/kaigai/us/20080331D2M3101Y31.html

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