成長するネットワークでは一人勝ちが出ることについて

Facebookアプリでは、ごく一部の開発者が寡占、というニュースを見て思い出したのがこの本。

2002年の本ですが、

「成長過程にある系では、圧倒的な一人勝ち(もしくは少数寡占)が出る」

という話し。いわゆる「ロングテール」での、「ちょぼちょぼ大勢」というのの逆側にある、超人気のごく限られたトップグループがどうしてできるのか、ということを数学的に解析した本。

YouTubeやFacebookなど実証ケースには事欠かない出来事ゆえ解析してもらうまでもないとも言えるが、
「実際に起こっている現象が数学的に立証されると心が洗われる」
と思う人にはお勧めします。

で、話を戻してFacebookアプリ。

Facebookは「インフラ化」の道を邁進中で、サードパーティー開発者でも、Facebook上のユーザーページにアプリケーションをのせることができるFacebook Platformを公開。この春の発表以降、熱狂的な「Facebook向けアプリ開発」が続いており、それと共にFacebookの評価も上昇中。最近では、未だ未公開のFacebookが、1兆円の企業価値で増資中などという噂も。(マイクロソフトがこの企業価値で投資しようとしている、と。その後、Ballmerが「Facebookはそれほどのモンじゃない」と言っているという話もあるが。バブルじゃのぅ。)

で、その熱狂のFacebookアプリ。

O’Reilly Radarいわく

「5000以上あるFacebookアプリのうち、84個が利用率の87%を占めている。10万人以上のユーザーがいるのはたった45個だけ。」

トップ200開発者のアクティブユーザー数をグラフにするとこんな風になると。

TechCrunchの記事よりトップアプリの順位はこうなる。

1.  Top Friends   (Slide)
2.  FunWall        (Slide)
3.  Super Wall   (RockYou!)
4.  SuperPoke!  (Slide)
5.  Video          (Facebook)
6.  X Me           (RockYou!)
7.  iLike
8.  Movies
9.  Graffiti
10. Likeness        (RockYou!)

SlideRockYou!のアプリがそれぞれ3つずつ登場。他の5000社はどこへ~という感じなわけです。

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さて、冒頭で紹介した本で紹介される「寡占」の話だが、簡単にご紹介するとこんな感じです。

  • 自然界に現れる量は殆ど全て釣鐘型の分布を示す。どこかにピークがあり、その周辺に平均的に散らばりがある、という分布である。ネットワークのノードが持つリンク数も同じような分布になるだろうと考えられてきた。
  • この分布が現れるには、「ネットワークのノード数は一定。しかも、ネットワークのノードはどれも平等で、リンクを獲得する可能性は、どのノードも同じ」というランダム・ネットワークが前提となる。
  • しかし、多くのネットワークでは、「成長」が起こる。既にあるノード間でのリンクのみならず、ノードそのものが増えていく。
  • また、リンクはランダムに張られたりしない。リンクを呼び込むのは人気であり、既に人気のあるノードがよりたくさんリンクされる、という「優先的選択」が起こる
  • 「成長」と「優先的選択」をモデルに組み込むと、結果として、「わずかなリンクしか持たない大多数のノード」と、「膨大なリンクを持つ一握りのハブ」という「ベキ法則」に従う「スケールフリーネットワーク」ができる

・・・と迂遠な話をした後にでてくる分布図は、おなじみの「ロングテール」なんですが。はい。でも私は面白いと思いましたです。

成長するネットワークでは一人勝ちが出ることについて」への2件のフィードバック

  1. >・・・と迂遠な話をした後にでてくる分布図は、おなじみの「ロングテール」なんですが。はい。
    そうですね(笑
    だからこそ「ビジネス書」と思って読んだけど役立たなかった、というレビューがあるのかなと。
    >でも私は面白いと思いましたです。
    はい。私も面白いと思いました。
    誤解されがちな本ですね。Amazonのレビューにも書かれていますが。タイトル通り「ネットワーク思考」の本とか、「ビジネスにおける寡占状況はなぜ生まれるか」の本だと思って読むと、事例が少なくてガッカリしますね。
    グラフ理論の歴史を、成り立ちから最新(当時)理論まで解説した、数学史の本として読む本だと私は思いました。そして、それが非常に面白い。

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  2. ネットワーク理論の核心部を抜粋してreviewされていますね、うまい切り口です。私も拙いAmazonにreviewしています。
    本書の核はネットワーク思考なんでしょうけれども、
    グラフ理論からボーアアインシュタイン凝縮まで
    様々な要素のネタを披露しており、私はこれらの枝葉も
    かなり収穫になりました。(知らない事もかなりありましたから)
    ちなみに「SYNC」(ステーィブン ストロガッツ)
    もsmall world networkに関する書物でして
    良い類書ですよ。

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