日本では流行らなそうなビジネス:MyHeritage

恐るべしユダヤネットワーク。

(・・・・というと、すぐ「陰謀」とか考えるかもしれませんが、そういうのではありません。)

MyHeritage.comは、「家系図」サイト。名前、生年・享年、写真等をアップロードして、17言語で家系図を作成可能。2005年にイスラエルで事業開始以降、既にユーザーが1720万人もいて、15万の家系図、1億8千万人のプロファイルが作られ、毎日15万プロファイルが新規作成されているそうです。これまではクライアントアプリをダウンロードしなければならなかったのが、最新バージョンはフラッシュベースで技術が大向上して使いやすくなったそうな。

「苗字ファインダー」とか、顔画像検索とか、いろいろ多機能。さらに、がんばってどんどん家系図を作っていくと、別の人の家系図と合体するなんてことも起こりうるらしい。(「ええっ?うちのひいおじいちゃんと、Joshuaのひいおじいちゃんが兄弟?」とか、そういう。)

先祖ファインダー」もあって、たとえば、同じ苗字の違うスペルも含めた「先祖探し」ができる。

ためしにGoldmanと入れてみたら、Goldmanの派生スペルとしてGoldmann、Godmann、Geldmanなど、いろいろでてきました。なるほど。

競合にGeniという会社もあるが、こちらもスタートして数ヶ月で500万ユーザーとなり、$100 millionのバリュエーションで増資した、と。

ユダヤ民族は国土を失ってウン千年、世界を転々としながらも、脈々とユダヤの血筋を守ってきた人たち。

しかも、世界に冠たる事業家、芸術家、思想家を、これでもかとばかり輩出してきた黄金の知識層でもある。(このあたり、Paul Johnsonの A History of the Jewsに詳しい。ハイネとマルクスもユダヤ人、しかも友人で、その後マルクスは改宗して非ユダヤ化した・・・・と書いてあったような記憶が。)

(余談ながら、ユダヤは母系。母親がユダヤ人だったら子供もユダヤ人、というのが正式なルールらしいです。一方、他の民族の人も、改宗してユダヤ人になることも可能ではある。)

ということで、「今となってはわからなくなってしまった先祖や親戚を知りたい」というニーズがかなりあるのでしょう。

とはいうものの、世界に散ったユダヤ人の総数は現在1500万人とWikipediaにはある。なぜMyHeritage.comのユーザー数の方が世界のユダヤ人口より多いんでしょうか。うーん・・・・。

一応Myheritageユーザーは、別にユダヤ人に限らない。見てみると、中国人らしき人などもいることはいる模様。ユーザー数にはそういう、非ユダヤ人も大量に入っているのでありましょう。(と好意的に解釈)。

確かに、世界に血族が散っているという意味では、中国人も負けていない。

うちの(中国人の)ダンナ側の親戚いわく、中国の正式な子供の命名には、「generational character」が必要だそう。同じ代の子供たちは、全員同じ漢字をシェアすると。で、その漢字は、親戚一同がシェアする漢詩の順番になっていると。その漢詩は、大昔に親戚が一堂に会して詠んだものらしい。で、その詩の順番に使っていくそうな。これにより、離れ離れになった親戚が出会っても、上下関係が一目瞭然。

「漢詩が終わっちゃったらどうするわけ?」

と聞いたところ、

「また、世界の親戚で一堂に会して新しい詩を詠むんじゃないの?よくしらないけど」

とのことでした。しかし、これを話してくれたダンナのイトコは、6歳で台湾を出た人ゆえ、

「いやー、私も実はよく知らないんだけどね」

という注意つき。本当はどうなのでしょうか。ご存知の方がいたら教えてください。

・・・ただし、本当だったとしても、実際には、こんな古式ゆかしいことをしている中国人の方はそれほどいない模様ではあります。(最近の中国の若い人には、漢字一文字の名前の人とかいるし。)

いずれにせよ、こういう人たちだったら、「もしかしたら、ものすごい人が先祖にいるかもしれない」という期待も含めて家系図つくりのニーズもあると思うんですが、私の家など、どう考えても

農民 農民  農民 農民
 \       /     \       /
    農民       農民
       \                   /

と延々続くのみ。つまらないぞよ。

いや、もちろん、日本にも由緒正しいお家柄の人もたくさんいらっしゃるわけで、実際そういう知り合いもいますが、そういう人たちはMyHeritage.comがなくても、先祖代々、親類縁者にどういう人がいるかわかっているケースが多い。やっぱりあんまりニーズはなさそう・・・。(一応Googleしてみたところ、親戚マップなるソフトは発見しましたが。)

もしかしてユダヤ人の人も、一生懸命調べても、先祖の隅々まで「商人・商人・商人」ということもあるのかもしれませんが、「先祖がどこからきたかよくわからない」ということが「知りたい欲」に火をつけるのかもしれませんね。人間、手に入らないものは欲しくなるものなので。

日本では流行らなそうなビジネス:MyHeritage」への7件のフィードバック

  1. 中学時代の友人を思い出しました。まだ子供がいないのですが、ダンナさんの実家では、数年ごとに「家系図祭り」というのが行われ、家系図を持ち寄って会合みたいなものをするそうです。
    由緒正しいのも良いけど、「跡継ぎを絶やすな」というプレッシャーがすごいだろうなぁ・・・と、友人が少し気の毒になりました。
    当の夫婦はとても仲むつまじくて、幸せそうです。

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  2. 私は日本でも流行るような気がします。
    94歳の祖母が元気なうちに家系図をつくらないと、家族の歴史が永遠に失われてしまいそうで、数年前からこういうソフトを探していました(自作しようかとも思ったのですが、つくるとなると結構大変なんですよね)。
    自分のルーツ探しというのは、現実的に利得がなくてもやりたい人が多いのでは、と思います。

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  3. 中国では、漢詩を使うんですか。朝鮮(というか、知り合いの在日の間)では、五行六曜とかの文字を順に廻して使います。火、土、水とかを編とかの部分に含む漢字を使う訳です。
    中国でも、一族が離れてしまったから、再集合は無理ですし、廻すんじゃないでしょうか。

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  4. generational character、中国で輩行字、韓国で行列字というやつですよね。漢詩を使うのが一般的なのかどうかは?ですが。

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  5. 中国人の世代ごとの漢字、generation characterっていうんですね。
    うちのダンナの親戚でも男の子だけですが漢詩に従って名前をつけてます。ただ故郷を離れて何世代、次の代の漢字がわからなくなってしまったので、先日移民してきた一族の集合会で次の1行(4字)を採択してました。

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  6. chikaです。
    おおお、本当に親戚で集まって漢詩を詠んでる方々がいるんですね!感動・・・・。
    ”輩行字”で検索したらこんなページが出てきたので、がんばって解読してみようとしましたが、なんとなくしかわからない(当たり前か)。
    http://bbs.chens.org.cn/showtopic.asp?TOPIC_ID=2938&Forum_ID=45
    同じものが、韓国ではもう少しルールがリジッド(五行六曜とか?)なんでしょーか。。
    ちなみに、中国語は、親類を呼ぶ呼称が多くて、「ああ、こういうことをものすごく気にする人たちなんだなぁ」と思います。祖父母でも、母方か父方で呼び方が違う、とか、「13番目のおばさん」とか「3番目のイトコ」という、順番をクリアにした名称で呼んだりとか・・・(ダンナの親戚がやってることを耳ダンボで聞いてるだけなので、正しい知識じゃないかもい知れませんが。)

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