アメリカの結婚の今

「素敵なお姉さん風高学歴日本女性は婚期が遅れがち」というエントリーでは、思いがけずいろいろコメントいただきました。だから、というわけでも無いのですが、今日は、「アメリカの結婚の現状」について、最近読んだ記事のあれこれ。

1.結婚が人間を経済的に豊かにする

2.今度の大統領は、Bushよりずっと「普通の結婚」をしている人になりそう

3.専業主婦は贅沢な身分

  • 1.結婚が人間を経済的に豊かにする

EconomistのThe frayed knot。

以前、「アメリカでは同じような収入の男女が結婚することが一般化し、世帯間の貧富の格差が拡大している」という話を書きましたが、今回のEconomistの記事はそれをさらに進め「結婚そのものが富を作り出す」という話。

Among the elite (excluding film stars), the nuclear family is
holding up quite well. Only 4% of the children of mothers with college
degrees are born out of wedlock. And the divorce rate among
college-educated women has plummeted. Of those who first tied the knot
between 1975 and 1979, 29% were divorced within ten years. Among those
who first married between 1990 and 1994, only 16.5% were.

At the bottom of the education scale, the picture is reversed. Among
high-school dropouts, the divorce rate rose from 38% for those who
first married in 1975-79 to 46% for those who first married in 1990-94.
Among those with a high school diploma but no college, it rose from 35%
to 38%. And these figures are only part of the story. Many mothers
avoid divorce by never marrying in the first place. The out-of-wedlock
birth rate among women who drop out of high school is 15%. Among
African-Americans, it is a staggering 67%.

整理すると、

未婚のまま子供を産む割合

  • 大卒の女性:4%
  • 高校を卒業しなかった女性:15%
  • 黒人女性:67%

90年から94年の間に結婚した人が10年以内に離婚した割合

  • 大卒の女性:16.5% (しかも15年前に比べて大幅に減少)
  • 高卒の女性:38% (15年前に比べて微増)
  • 高校を卒業しなかった女性:46% (15年前に比べて大幅に増加)

ということ。「それで?」と思われるかもしれませんが、結婚している状態をキープしている人たちの方が経済的に圧倒的に豊か。

Those who marry “till death do us part” end up, on average, four times richer than those who never marry.

結婚して、しかもそれを持続させた人は、結婚しなかった人より4倍金持ち、と。

もちろん「それって、単にダブルインカムだからじゃないの?」という疑問は湧きますが、それについても

「同じ条件の人間でも、結婚によって経済的豊かさが増す」

という別の調査結果あり。「結婚により勤勉さが増す」「結婚すると、貯蓄・運用をまじめにするようになる」「片方が病気や失業した際にもう片方がセーフティネットになる」「夫婦間分業により、効率が増す」といった点が指摘されてます。

たとえば

Married men drink less, take fewer drugs and work harder, earning
between 10% and 40% more than single men with similar schooling and job
histories.

結婚した男性は、同様の学歴と職歴の独身の男性に比べて、10-40%収入が多いと。それ以外にも、様々なデータが出てるので、興味がある人は本文を読んで下さい。

とにかくこの記事のポイントは、

「経済的に成功するタイプの人がたまたま結婚もする」のではなく、「同じような条件の人でも、結婚がさらなる豊かさをもたらす」

ということなのでした。しかも学歴の高さと結婚の安定に正の相関があるよ、ということ。

  • 2.今度の大統領は、Bushよりずっと「普通の結婚」をしている人になりそう

New York TimesのFirst-Family Values。今のブッシュ大統領と奥さんのLauraは「二人とも初婚のまま現在に至る、しかもLauraは夫に仕える家事好きで控えめな専業主婦」。何十年か前のテレビ番組ならいざしらず、いまどきこんな夫婦は稀。今出馬している有力大統領候補は、良くも悪くも「今風」のカップルが多く、やっと大統領一家が普通の家族に近くなる、という話。

具体的には、伝統的に保守的価値観で知られる共和党側の候補の多くに離婚歴があり、元ニューヨーク市長のジュリアーニとその奥さんはそれぞれ2-3回離婚済み。

一方の民主党は、ヒラリークリントンはもちろん専業主婦じゃないし、バラックオバマの奥さんは弁護士だし、ジョンエドワーズの奥さんは、選挙活動でダンナより目立つほどの大活躍。

「保守的なカップルは離婚」「民主的カップルは夫婦共働き」という状態なのであるが、いずれにせよ、そういうのが「アメリカの普通の家庭」と。

  • 3.専業主婦は贅沢な身分

San Jose MercuryのCelebrate, don’t criticize motherhood choicesは「専業主婦」「働く母親」の間のいさかいの話。ま、これは日本でもありますが、多分日本と違うのは、このいさかいに参戦できるのは高所得家庭の妻に限られる、ということ。いわく、

Of course, most women have to earn a salary to pay the bills, so they don’t have time to ponder the question.

「殆どの女性は金のために働かなければならないから、専業主婦になるべきかどうか、なんていうことを考えている余裕もない」。

これまた別件ですが、先週の人生相談コラムDear Abbyは「外で働こうとしない妻を持つ、かわいそうな男性」についての相談。

"Joey" is a really nice guy,
but his wife is driving him over the edge. She’s obsessive-compulsive
and, despite their financial problems, refuses to get a job.  She says her mother never had to work and she shouldn’t either.

金銭問題を抱えているのに働こうとしない妻の理屈は、「私のお母さんは働かなくても良かったから、私だって働く必要はない」と。回答者のAbbyさんは

The economic realities are very different for today’s generation of women than they were when Joey’s mother-in-law was married.

「母親の世代と経済事情が違うんだから、働こうとしない妻が悪い。」(カウンセリングを受け、それでもダメだったときの離婚準備で弁護士に相談するべし、と続く)。

***
うーむ、かるーく書こうと思ったのに、また長くなってしまった。

要約すると、

「高学歴」→「結婚」→「経済力」→「うまく行ったら専業主婦」

というのがアメリカの傾向である、という話でした。では。

アメリカの結婚の今」への8件のフィードバック

  1. 「ヤバイ経済学」って本にこの内容と全く同じ内容が
    書いてありましたよ。しかも統計をフルに使ってあります。
    これも私見ですが高収入の女性は高収入の男性を
    (そうでない女性以上に)求める傾向にあるのではないか?と思います。これって高学歴の女性が高学歴の男性を求めるのと同様に、、、、、女って贅沢だな。
    これは一般論に過ぎませんが、高学歴の男性は高学歴の女性を求めるとは限りません、あまりこだわらない人が多いかも。
    でも統計を出してきてこの問題を論じる方が(単に
    個人的意見を述べるよりも)主観的になりすぎないでしょう。

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  2.  アメリカでは、所得税の計算をする際に個人の収入か夫婦の収入を合計して半分に割った収入のどちらを使うかを選べると聞いたので、働かない奥さんに有利な国なのかなと思ったのですが全然そんなことはないのですね^^;

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  3. chikaです。
    ヤバイ経済学(Freakonomics)、この本文のようなことまでは書いてないと思うんですけど・・・。ちなみに、あの本で相当数のページを割かれている「堕胎を合法化すると犯罪率が下がる」という統計、コンピュータのプログラムミスで、実は相関はない、という指摘もWSJから入れられてます。。(作者自身、間違いがあったことは認識。ただし、間違いを訂正しても相関はある、と反論していますが)ま、人間間違いはあるのですが、本の中では、かなり気合が入った「発見」として書かれているので、ちょっとがっくり。
    http://www.freakonomics.com/blog/2005/11/28/everything-in-freakonomics-is-wrong/
    とはいうものの、Freakonomisは基本的に「相関」とはなにか、「因果関係と相関の違い」は何か、ということを懇切丁寧に指摘した本で、その点を理解したい方、ミクロ経済学の初歩を知りたい方には大変お勧めします。上記のミスはさてはおきつ、サラッと面白く読めます。ただし「相関」「因果関係」あたりの基礎理解が既にある人には薄い内容です。20ページもあれば説明できることを延々一冊に伸ばして書いてあるので。ま、本って大概そうですけど。(自分のも含めw)
    >個人の収入か夫婦の収入を合計して半分
    カリフォルニアは合算オンリーで、夫婦が別々に納税というのはできないです。なので、結婚すると、結婚前より(2人を足した合算での)税金が増えます。(がーん)。しかし、夫婦の稼ぎが同等だと、たとえ税金で持ってかれてもやっぱり働いた方が沢山残る、ということになるのでした。

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  4. 夫婦の合算納税の話ですが・・・Federalでは「Married filing separately」というのができるのでは?ニューヨークにいたころですが、別居中の前夫と別々にファイルしていて、そのほうが「Married filing jointly」よりも不利で「ぐぞぉ~」と思っていたのを覚えています。確か、「Single」よりも高かったような・・結婚してjoint filingすると、税金絶対額は増えるけれど、違うbracketが適用になって、率からすると個人で別々にやるより少し有利、じゃなかったでしたっけ?
    ウチなどは関係ないですが、夫婦ともに会社勤めだと、どっちが世帯主だとかアメリカでは問わないので、両方で家族全員の保険とか401Kとかできますよね。そういのも何かと便利です。

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  5. いつも興味深く読ませていただいています。
    > 「同じような条件の人でも、結婚がさらなる豊かさをもたらす」
    > しかも学歴の高さと結婚の安定に正の相関がある
    これらは、まさにその「因果関係と相関の違い」という視点で眺めたとき、わたしなんかは「経済的に問題があるから結婚が長く続かない」と解釈したくなるのですが、「結婚がさらなる豊かさをもたらす」と結論付けられているのが何故か、よくわかりませんでした。

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  6. chikaです。
    >夫婦の合算納税
    実は私も定かには知りません。。。納税はaccountantとダンナまかせなので・・。言われるがままって感じです。一応marriage penaltyなるものがあって、違うbracket(つまり合算収入に対する税率)が適用になるので不利、と私は思ったんですが、でも、bracketがどこになるかで、不利かどうかは確かに違ってきますね。
    こんな・・・↓のはありましたが、でも、これもbracketがどこからどこに移るかで変わってきそう。
    http://www.savewealth.com/news/9905/marriagepenalty.html
    「両方会社勤め」は確かに福利厚生がちゃんとしてる会社だと便利ですよね。
    >「結婚がさらなる豊かさをもたらす」と結論付けられている
    確かに、Economistが引用してる各種データはother things equal, marriage alone has positive corelation with income/wealthというものがほとんどで、「どっちが原因だよ」と思われるものもありますね。(結構長い記事だし引用満載なので、興味があったら是非原文を読んでみてください。)
    一応因果関係としては・・・(本文でも触れましたが)
    American men, once married, tend to take their responsibilities seriously. Avner Ahituv of the University of Haifa and Robert Lerman of the Urban Institute found that “entering marriage raises hours worked quickly and substantially.” Married men drink less, take fewer drugs and work harder, earning between 10% and 40% more than single men with similar schooling and job histories.
    といったようなことが延々とあります。すごく簡単に言うと
    「結婚したんだからちゃんとしなきゃ」
    「結婚したんだから腰をすえて資産形成しよう」
    という気になるので、結婚を原因として経済的に豊かになる、と。(金持ち父さん、みたいな話ですが・・・)。
    もし、結婚が原因ではなく、経済力に差が出ているとすると、あちこちで調べた数十の変数以外に、経済力に影響をもたらす原因をどこかから探してこないといけないわけですが、so farそれがないよ、という、消去法的説明ではありますが。
    実際、結婚すると出費も減るし、(二人で生活したからといって、生活費は一人で暮らすのの二倍にならない)、先々のことも考えていろいろきちんと投資しようという気にもなるし、しかも二人の資産をプールすることでより効率的投資ポートフォリオを持てる、というのは自分の身を翻ってもあります。。。

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  7. 前回の記事に続いて、いろいろ考えさせられる記事ですね。
    高学歴の女性が高望みというよりは、高学歴など自分と環境の似ている人が結婚相手としては「当たり前」、そうでない人は「ありえない」。逆に、環境的に恵まれていない人は、恵まれないのが「当たり前」。だから離婚や未婚の母率が高い。結婚後の相乗効果はともかく、結婚する相手を選ぶにあたっては環境が大きいのかなぁというのが今回の感想です。
    ・・・とすると、前回の「日本の高学歴女性・・・」の話には当てはまらないですねぇ。むむむ。

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  8. なるほど。 CHIKAさんがおっしゃることの予感めいたものがありました。 日本というところは、こんなことについても、 今はfarawayとか 、えらくアナーキーになってますので黙ってしまいますがさて。

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