バカがバカにされる国アメリカ

まずこのエントリーでの「バカ」の定義。それは

「面倒がったり、人の話を鵜呑みにしたりして、自分でちゃんと情報を調べない人」

のこと。こういう人が、とことん「バカにされる」のがアメリカであるのォ、というのが私の感慨である。ここでいう「バカにされる」とは、

「高い料金を吹っかけられたり、本当は存在する素敵な何かを提供してもらえない」

ということ。

・・・・なんていうと、大げさだが、例えば電話料金。きちんと調べて安いサービスを使うか、適当に受話器を取って通話しちゃうかで「数百倍」も値段が違う。

ベイエリアだと、普通にデフォルトでなんとなく入っちゃうのがAT&T。(Pacific Bell→SBC→AT&Tとどんどん買収されて何がなんだかよくわからないが、とにかく今はAT&T。)

で、AT&Tに加入している電話で、フワーッと日本に国際電話をかけると、一分5ドルとか、そういうトンでもない料金になる(もっとだったかも)。何年か前フワーッとかけて30分くらい話して腰を抜かした。(というか、腰を抜かしたのはダンナだが。)しかし、ちゃんと「国際電話プラン」なるものに月5ドルだか10ドルだか払って入ると、いきなり一分10セントとか、そういう値段になる。

そして、さらにサードパーティーの「コーリングカード」なるものを購入すると、もっと安くなる。「コーリングカード」というのは名ばかりで、今や物理的なカードではないものも多い。(これは日本も一緒だが。)とにかく、前払いでいくらか払っておいて、アクセス番号に電話してから相手先番号をかけることで安くなる、というサービス。

例えば、Simply Asiaなる怪しげなカード。 サービスチャージも入れて、日本まで1.6セント/分。2円です。(ただし、同じ日本でも、携帯にかける場合は16セント強ですが、それでも20円/秒。これ以外に、二週間に1回、69セントのサービス料がかかります。あしからず。)

うう、一分5ドル払った私がバカだったのね、、、と涙を呑んだ。

だが、しかし、負け惜しみかもしれないが、これこそ資本主義社会の本質だ~っとも思った。みんなが最安ディールを探して血眼にならないと、市場が適切に機能しないモンね。そして、それには、血眼で探す人へのご褒美が必要だ。(参考:資本主義は気持ち悪い←時々リンクしてますが、このエントリー好きなのですよ。)

・・・が、しかし、1年位前、San Jose MercuryのActionLineという「読者にかわって悪徳業者を退治するコラム」で、インド人が

「インドに電話したら一分8ドル(だか10ドルだか)取られた。国際電話が安くなるコーリングプランに入っていたら10分の1の値段なのに。うちはコーリングプランに入ってはいないが、ひどいではないか」

とクレーム。コラムニストが電話会社に抗議したら、「コーリングプランに入っていた場合の料金」にまけてくれた、というのがあった。

・・・あああ、交渉もしなきゃいけなかったのね。・・・私の非バカへの道は遠い。

ちなみに、こういう話をすると、日本人の多くが

「交渉したり調べている時間があれば、その間に生産的なほかの仕事をした方がずっと効率的だ」

という。私もそう思います。はい。しかし、これは自己欺瞞であることが多い。「交渉したり調べたり」するかわりに、その時間でちゃんとバリューの出る仕事してる人ってあんまりいないと思います。(自分も含め。)

ということで、シリコンバレーの生活で「非バカ」を目指す日本人の強い味方をご紹介。それは、かもくんの底値生活inシリコンバレー。シリコンバレー在住の「かもくん」が最もお安いディールを探すサイト。なんとお願いすると価格リサーチまでして下さる模様です。特に、かもくんサンの、最安ティッシュペーパーにかける情熱を草葉の陰から尊敬する渡辺でございます。(ティッシュというカテゴリーまであるぞよ。)

バカがバカにされる国アメリカ」への19件のフィードバック

  1. 自己欺瞞というならば、このサービスレベルを肯定的に見てしまうのが一番の欺瞞なのではないでしょうか(笑)。
    さておき。心配なのは「情報格差」ではないでしょうか。
    ネット環境が無いなどの理由で、過程ではなく、結果の点において、バカと同じになってる人は、そう少なくはないだろうと思います。その面からすると、低所得者がバカから抜け出せない社会が資本主義の本質だ、とは、ちょっと考えなくないですね。(現実はそうなってますが・・・)。

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  2. 皮肉が過ぎました。すみません。
    この状況(サービスレベル)だからこそ市場が適切に機能するのである。⇒これ以上に良いサービスレベルでは、市場は適切に機能しないんだよ(だから、サービスが良すぎるのは良くないのだよ)、という主張だと読んでしまいました。

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  3. 底値生活 in シリコンバレー

    ・底値生活 in シリコンバレー イイ!! よすぎる。。在住時にあれば。。 でも…

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  4. そういえば、私は留学当初何も知らずに電話会社に月々$40??くらいの基本料金を払ってました。で、「低所得者用の基本料金」とかいうのを知りまして。。。書類にサインしてあっという間に月々$9?くらいの基本料金になりましたー。半年以上無駄金払ってましたよ。貧乏学生だったのに(何しろ「バカ」だったので)。
    最近は日本もかなり格差があるんではないかなーと思います。「情報」を得る努力をしないとけっこう無駄に高いお金を払う確率が高くなっているようです。

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  5. そこまでしなくてももっと物価の安いところに引っ越せばいいだけじゃん。

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  6. 「情報格差」については昔からあったと思います。貧乏人には貧乏人の口コミネットワークがあり、そういう有益な情報については意外に伝わっていたものです。今はそれが形を変えて出てきただけで、昔はなかったというわけではありません。
    >「みんなが最安ディールを探して血眼にならないと、市場が適切に機能しないモンね。」
    これは非常に重要だと思います。これがあるからこそベンチャー企業が成長できるし、努力するものが報われるのです。日本みたいに「働いたら負け」な社会とは大違い。

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  7. >「交渉したり調べている時間があれば、その間に生産的なほかの仕事をした方がずっと効率的だ」
    自分の場合は、調査にかける時間+電話を握り締めて過ごす時間+交渉に費やす時間(ここで精神的にかなり消耗)+疲労回復にかける時間 のすべてを考慮した場合、実は損してるような気がしてならないことが多くあります。電話しなきゃいけない、と考えるだけで気が重いです。(相手の思う壷なわけですが。。。)
    私の非バカへの道も遠いです。。。

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  8. 亡国への道をまっしぐらに走っているような・・・
    これの行き着く先は中国ですね。
    アメリカはせっかくの資本主義を泥棒貴族の横行していた19世紀に退化しようとしている、と、読める記事でした。

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  9. chikaです。
    えっと、アメリカの名誉(?)のためにいいますと、弱者へのセーフティーネットってしっかりしてるんですよ。最貧層には、医療(かなり手厚い)、住宅、食事など、いろいろと無料で提供されてます。(家族で住める無料住宅、なんてのまであります。)「車が無い人」用の無料送迎サービスもありますが、ベイエリアだとこの車を毎日何台も見かけます。映画、ミリオンダラーベイビーで、娘に家をプレゼントされた貧しい親が、
    「こんなもんもらったら、保護が受けられなくなるかもしれないじゃないか」
    と怒るシーンがありますが、この背景が「手厚い弱者保護」なのでした。
    なお、「情報格差」の問題点はずーっと指摘されてますが、一応公共の図書館に行くとずらずらずらと大量にインターネットにつながったPCがあり、誰でも自由に使えます。それだけでは不十分ですけど、もちろん。やっぱりアクセスをむちゃくちゃ安くして、PCも格安のを配る、みたいな施策が必要なんでしょうね。
    ちなみに、Undercover Economistという本面白いですよ。資本主義の原則をわかりやすく説明してます。日本語にしたら
    「なるほどミクロ経済」
    みたいな本です。「競争を促進しつつ、弱者を保護するにはどうすべきか」ということも触れられてます。もちろん、情報の非対称性やシグナリングなんかもいろいろ丁寧に説明されてます。。。

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  10. つまり、情報を検索する意欲や能力体力があり、身近にそういう機器が揃い、インフラも整っている「強者」のみが得をするシステムということですね。身体的精神的(疾病や障害、事故によるものも含む)「弱者」は、どんどん金を無駄に使わせられ、毟り取られて死んでいくのも仕方がないというシステムなわけです。

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  11. 主要国内都市銀行の振込み手数料まとめ

    Web申し込みの通販でお金の振込みが必要になった。代引きは非対応だし、クレジットカード嫌いの自分としては現金振込みを選択した。今時クレジットカード決済は方法を間違えなければ安全だし、早い。しかし、アナログな感覚から抜け出せない自分は、大した根拠も無く「やっ…

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  12. 日本の携帯電話のパケット料にけっこう似てますね。
    何も知らずに、パケット定額などに入らずにちょっとサイトをみたりすると、とんでもないパケット料がかかって「パケ死」・・・

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  13. 「弱者切捨て」では日本の方が上かもしれませんね。
    リハビリ日数制限、療養病床6割削減、高齢者医療費削減などなど。
    病院から高齢者・障碍者が追い出されるようになり、「リハビリ難民」「介護難民」という言葉も言われ始めているようですよ。
    介護の沙汰も金次第
    http://ssd.dyndns.info/Diary/archives/2007/03/post_170.html

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  14. >一応公共の図書館に行くとずらずらずらと大量にインターネットにつながったPCがあり、誰でも自由に使えます。
    お、そう言えば日本でもハローワークには仕事検索用のパソコンがずらずらと並んでいて、失業者なら誰でも求人の検索に使えるようになっていましたね。パソコンが使えない人でも大丈夫なようにタッチパネルをスタイラスみたいなペンで押す方式になってました。(失業者の基礎知識。 orz)
    でも、私は一度も使ったことがありません。どうせハローワークで応募をかけてる企業なんて優良企業はまずないし、それどころかいわゆるDQN企業も多いようですから。そもそも現在においてパソコンのキーボードも満足に打てない人ができる仕事って、非常に制限されないですか?
    あのパソコンも、政府も弱者救済に力を入れてますよという『ポーズを取るため』だけに入れてある感じもします。
    >交渉したり調べている時間があれば、~
    「千円札は拾うな」というタイトルの本も出ていましたね。貧乏人の私は絶対に床に落ちた千円札は拾うとは思うけれど、その発想自体は正しいと思います。
    パフォーマンスに応じた成果給が年間100万円程度もらえる人ならば、年間数万円節約するために努力するよりは成果を上げるために力を入れた方がお得です。どんなに頑張って成果を上げても、運が良くて年間せいぜい3万円程度のボーナスUPが理論上の限界というのであれば、成果を上げるよりは適当に頑張ったふりをして年3万円の節約に全力を尽くした方がお得です。
    日本の経営者は「努力するな、成果を出すな」と言ってるようなものですよ。本当に頑張ったら負けなんです。だから私はいつも負け組一直線。ムシャクシャしてやった。それでも後悔はしていません。

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  15. 今更ながらいろんな意味でまずい記事を・・・
    ここ、あんまり注目されてないからましなものの、下手に転載でもされたらこのBlog炎上しかねませんよ。
    今日本では正直者が馬鹿を見る、という現実に極めていらだっている人が多くて、それを小泉支持者や日本版ネオリベが中韓排斥を隠れ蓑に必死に火消しを行い、それがさらに東アジア国家への「正義」の怒りにつながって、結構変な状況になっているんです。
    実際、どこから日本全体を揺るがすような火がついてもおかしくないくらい、不満の温度が爆発のフラッシュポンイトめがけて近づいているんですよ。
    何でこの時期にこんなものを天然ですよといわんばかりにお気楽に出せるのかはわかりませんが、日本国内では下手に炎上したら手がつけられなくて、そのことが非常な問題になっているんです。
    無視したり削除したりすればいいと思われるかもしれませんが、格差と正直と欺瞞の問題があちこちでとくろをまいているんです。今の日本は。
    どうか出来れば、これは自戒めいた意見ですが、アップするまえに果たしてこんな文章でいいんだろうか、とつねに推敲しなおすことをお勧めします。

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  16. ああ、畜生、言ったそばから文のつながらん文章を・・・(相当来ているんだな)
    それとコメントの返事をいただけるのはうれしいんですが、
    あげられた弱者保護って、それはキリスト教団体の援助だったり、イスラム的喜捨精神としか思えない金持ちの個人寄付の行為の結果だったり、もしくは各種非営利団体のソーシャルサービスではないのでしょうか。
    もしそうだとするなら、それはあくまでもキリスト教やそれにに準ずる奉仕精神、ないしは個人やそれに近い団体のそれぞれの互助精神であって、どう考えても資本主義社会の精神や、近来のアメリカニズムから生まれてきたものとは違う、もっと言えば、そこからの反発、ないしは無関係な代物ではありませんか。
    (実際、上のような「正直者は馬鹿を見る」
    アメリカ政策を受け入れたIMF以降の韓国では、そんな資本主義と直接つながらない
    保護や互助制度がないため、大量の国外亡命者と超格差を生み、実質経済破綻、国家崩壊の一歩手前まで来ています)
    アメリカの福祉や保険制度の手厚さは実は欧州と変わらないと聞いてます。
    (フランスの哲学者が書いたアメリカの眩暈、と言う本にかなり詳しく書かれてました)しかし、まさにあなたが書かれているように、あまりに複雑で、あまりに権利関係が錯綜していて、実質ほとんど機能してないことも多いそうです。
    何より、制度は出来る限りのシンプルさを目指さない限り、複雑怪奇のサービスの実質的な強要は、そのことで強くなる消費者をうむのでなくその隙間に腐敗を呼び込むだけなんですよ。
    第一、シリコンバレーの人がスパゲティソースのプログラム、と言ってもおかしくないわけの分からない複雑なサービスを称揚するのって、自分の仕事を侮蔑していることになりませんか。
    整理されてもない、だけどどこに宝があるのかもわからない、そんなプログラムを使用してサービスを作ることがよいことなんだ、シンプルなんかくそくらえ、とわめくプログラマーやSEをあなたは使いたいかってことですよ。
    あと、一つ。
    このリンク先を紹介します。
    日本もまたこうなりつつある、のではなく、
    もしかするとこんな先すらないくらい、日本もまた追いつめられているのですが
    暗いニュースリンク: アメリカ医療システムの危機:医療難民、カナダに越境
    http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/2007/03/post_691e.html

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  17. chikaです。
    炎上等々、ご心配ありがとうございます。ご心配も頂いたことですので、こちらのコメント・トラックバック受付は終了とさせていただきます。皆様おつかれさまでした~。話が尽きない方は、別の場所でご自由にお続けください。コピーライトもご心配なくどんどん転載ください。(下記のCreative Commonsの通りでございます。)
    ちなみに、ハテナのブックマークでコメントされてる方も多いので、そちらもどうぞご覧くださいませ。
    http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.chikawatanabe.com/blog/2007/03/post_3.html
    それから、私、アメリカの医療保険制度はほぼ崩壊していると考えており、医療保険は自由化すべきでない、というのが持論です。(医療では本質的にmarket mechanismが働かない、と思っています。)
    http://www.chikawatanabe.com/blog/2006/02/post_7.html
    をはじめとして、「医療」でサイト内検索をするといろいろ過去のエントリーが出ていますのでご参考まで。
    一応、最後に、この件を考えるに当たって役に立ちそうなキーワード:
    -Medicaid/Medicare
    -Kenneth Arrow (Fundamental theorems of welfare economics)
    -market failure (marketに任せるのが通常最も効率的な方法である。しかし、market failureがある場合は政府介入の必要がある)
    -政府が一旦税金を集めて、それから福祉をするより、国民が直接寄付でまかなう福祉の方が効率的であるという発想(福祉への市場原理の導入)
    ではさようなら~。

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