サンフランシスコ・ジャパンタウン

サンフランシスコのジャパンタウンはさびれている。日系人が減ると共に影が薄くなったらしい。日系人は既に3世、4世で、日本語ができる人も少ないし、そもそも他の人種・民族との混血が進んで100%日本人という人も少ない。日系人の集まりに行ったことがあるのだが、そのとき話した日系3世の人いわく、最近の若い日系人(4世とか)の方が、日本語を学んで日本の文化を理解したい、という希望が強いとのことであった。その上の世代に日本語ができる人が少ない、というのには戦争の影響もあるのかも。敵国語だったわけだからして。(知ってるか、若者よ。日本はアメリカと戦争して、アメリカに住んでた日本人は強制収容所に入れられたのだよ。)

さて、そのジャパンタウンの核とも言うべきミヤコホテルを、再生ファンドが買って、ヒップなホテル経営会社が再建する、という話がSan Francisco ChronicleのJapantown hotel hopes pop infusion will boost district。

「アニメとマンガとJポップと日本のストリートカルチャー」

が再生後のテーマだそうだ。小学館がスポンサーだそうです。

いいですなぁ。特に「マンガ」には期待したいぞよ。体育館みたいなマンガ専門店とか。全米からマンガ買うためにマニアが行脚するような。英語版と日本語版半分ずつ置いて欲しい。最近書いたが、英語版が出ていないマンガを読む涙ぐましいアメリカのファンもいることだし。↓

日本語版を誰かが持ってきて、一部をコピー、みんなでそれを持ち帰り、次の会までに、フキダシの中のセリフ等を勝手に想像、

「きっと、こういうお話なんじゃないか」

などと語り合う

こういう話を聞くと「ガイコクでは日本の低俗なことばかり取り上げている」と嘆く人がいる。が、しかし、歴史的に見ても、文化・芸術の中には最初は巷から出てくるものがたくさんある。歌舞伎だって浮世絵だって、登場した当時は「まぁぁ、なんてオ下劣な!!」(と言われたかどうかはわからないが)民衆芸能であった。モーツァルトだって、「下品」な音楽だと思われたりしたわけで。

最近うちのダンナは、Netflixでひたすらアニメを借りて見続けている。スクライド、サムライチャンプルー、攻殻機動隊、とか。(攻殻機動隊の公安9課で、草薙少佐が一人水着勤務なのは笑えるが・・・っていうか、ちょっと怒り。が、シリーズが進むにつれ肉体露出度が減るのはおかしい。)

私はそれを片目で見つつマンガを読む。この間、ベイエリア在住、元マッキンゼーのエリちゃんと、スージーことスズエちゃんと話してた時、

「借りた文庫本は返すの忘れることあるけど、マンガだけはちゃんと返さなくちゃ、と思う」

という話になった。同感、同感。マンガの方が大事だもんね。去年、日本で小学校6年生のクラスで、仕事について話す機会があったのだが、

「今、マンガがすごく好きな人、持ってるマンガは捨てないようにしよう。捨てると後悔する。」

と力説しておいた。なんのこっちゃ、であるが、メッセージとしては、

「大人になったからといって、子供の自分と全然かけ離れたところに、『できた人間の自分』が突如登場するわけではない。結局今の自分の延長線上で、何とかやっていくしかない。人間はそんなに変わらんのである。だから、少しずつ、自分のやりたいこと、できることを今から考えていこう。」

ということだったのである。で、「子供の自分が好きなマンガは大人になっても好き」、だから「マンガを大事にしよう」と。stillなんのこっちゃと思う方もいるだろうが、とにかくマンガは大切にしよう。私は大学卒業時の蔵書廃棄をいまだ後悔。

実際、今35-40歳くらいのところに、「マンガを普通の文化の一部と捕らえるか、ゲテモノと捕らえるか」のラインがあるような気がする。それより下の人は、ごくごく自然に「普通の本もマンガも大好き」と言えるし、マンガ蔵書を誇る人も多い。(前述のエリチャン、スージーは下の世代)。それより上はマンガ好きな人が少ないし、いても、もうちょっと屈折してたり隠れてたり。

さて、話をジャパンタウンに戻すと、記事にはさらにこんな記述が

Joie de Vivre (ホテル経営会社)also plans to enhance the traditional Japanese decor

(中略)On order are a large statue of raccoon-dog called a tanuki, commonly found
in Japanese commercial areas, as well as oversized kokeshi dolls, koi fish
streamers, umbrellas and other items

(中略)It plans to
invite each of Japan’s 47 prefectures to exhibit special products from their
regions

  • ミヤコホテルの内装は、伝統的和風テーストをさらに強化
  • 狸の置物、巨大なこけし、こいのぼり、傘等を導入
  • 日本の47都道府県の名産物展示会開催

ちなみに、ミヤコホテルの現在の「伝統的和風内装」はちょっと微妙。どう強化されるのだろうか。そして、狸はまだしも、なぜコケシ?そして名産物展?・・・よくわからないが、なんだか楽しそうだ。

東京は丸の内の、今は無き初代丸ビルも、建設当初は「ビルヂングの中にいると病気になる」という迷信がなぜか登場、なかなかテナントが入らず、名産物店だの見世物小屋だのが入っていたこともある、、、と聞いた気がする。(三菱地所の方、間違っていたら訂正願う。)そういう胡散臭い感じもしますなぁ。

とにかく、いろいろなものが猥雑に折り重なるようにあるのが、現代日本の都市の魅力。再生ジャパンタウンには、そういう「日本版バザール的魅力」がちゃんと出るといいですね。ゴスロリのお姉さんとかも、本物を呼んできてその辺を歩かせたりするとすばらしい・・・・。これぞ「文化の輸出」です。

サンフランシスコ・ジャパンタウン」への11件のフィードバック

  1. アニメ、マンガは僕のホームグランドですので、うれしい話ですね。アメリカにいるとたまに「なんで日本の大学にアニメ科がないのだ」と聞かれます。実はアニメ、マンガの価値を一番理解していないのは当の日本人なのかもしれませんね。
    ところで、最近日本の本屋ではマンガの立ち読みができないようにカバーがかかっていますが、アメリカの本屋ではマンガも立ち読みし放題です。あっ、紀伊国屋だけはカバーがかかっていますが。

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  2. Chikaさん、はじめまして。
    いつも楽しく読ませていただいています。
    でですね、ある大学にマンガ学部がございます。
    http://www.kyoto-seika.ac.jp/t_news/pretool2/manga/index.html
    アニメーション学科もありますです。
    この大学、少し前までいた職場のビル内で入試説明会だったかをやってて、聞きなれない名前だし、京都なのに何故東京で?と思って調べたのでした。
    そのときは「マンガコース」だったんですけどね。
    (少ないですが)古いマンガ、捨てない事にします。

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  3. 京都にはマンガミュージアムもできたようです。
    私の住む新潟も,著名漫画家を多数輩出しています。赤塚不二夫,水島新司,高橋留美子などなど。
    マンガ・アニメーションの専門学校もあります。また,市主催のアマチュアのマンガコンテストもあります(実は第一回の事務局を担当してました!)。
    ミヤコホテル,都道府県の名産品ってことは,ウチの地元のものも置いてもらえるのかな?週明けに早速シティプロモーション担当部長に情報提供だ~!!
    ちなみにマンガと私,小3から高校生くらいまで「りぼん」読者でした。「ソドミィ」などの言葉を,一条ゆかり作品から学びました(笑)。今はビッグコミックスピリッツを愛読中。「闇金ウシジマくん」と「もふ」がお気に入りです。
    chika様,いつも楽しい情報をありがとうございま~す。ダイスキ(^3^)!

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  4. マンガを所蔵するのは楽しいんですけど、かさばるのが困り者です。
    マンガ喫茶があるんで平気かなぁと考え、先月引越しを期に処分しました。
    おかげでマンガ喫茶通い頻度が上がり、新しいマンガとの出会いが増えてちょっと楽しいです。
    日本の住宅事情とマンガ喫茶の普及を考えると、所蔵せずにマンガ喫茶に通うってのはアリかと思います。

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  5. chikaです。
    マンガ学科、すごいですね。最近は日本の大学も生徒減少で大変らしいので、いろいろがんばってるんですねぇ・・・。将来的に、マンガに関係ない業界に就職することになったとき、resume上はちょっと大変な気もするけど。
    新潟物産展、サンフランシスコでの開催お待ちしてます~
    マンガ喫茶ですが、少女漫画がたくさんあって禁煙のところ、どこかご存知ありませんか?一条ゆかりとか、萩尾望都とか、山岸涼子とかがだーーっとあるような。

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  6. chikaさん,ムスビちゃんのお写真変わったのですね。chikaさんなんだか別の人みたい~。それからムスビちゃんは凄みが…!
    San Francisco Chronicleの記事を訳しているのですが,”according to the project’s draft environmental impact report now being completed by the city’s Redevelopment Agency”のところをどう訳せばいいのかわかりません。もしよかったら教えていただけませんか?
    それから,アメリカにおけるオタクカルチャー市場の規模がどのくらいであるか,どんな資料をあたればわかるでしょうか?検索して,スタンフォード日本センター研究部門長の中村先生による「ポップカルチャー政策概論」なる論文は探し当てたのですが…
    コンサルティングを本業にしていらっしゃる方にタダで教えろとは虫が良すぎですが,もし気が向いたらご助言ください。お願いします。

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  7. chikaです。
    >according to [the project’s draft environmental impact report] now being completed by [the city’s Redevelopment Agency]
    てな感じに分解。draftは形容詞的。
    「市の再開発組織が作成中の環境影響調査書の草案によれば」という感じでしょうか。
    資料は、snowbeesさんご推薦の本に加え、Wiredあたりに記事がありそう。http://www.chikawatanabe.com/blog/2006/09/hentai.html
    にリンクあります。

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  8. >私は大学卒業時の蔵書廃棄をいまだ後悔。
    あー、同じく大後悔でした。引越し荷物減らしたかったばかりに。
    結局、時間かかりましたが、古本屋を回って元どおりに。「ブックオフ」で内田美奈子の『百万人の数学変格活用』とかまとまって見つかった時は大歓喜でした。:)

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  9. snowbeesさん, chikaさん,ありがとうございました。英文ようやく理解できました。紹介いただいたご本もサイトも面白そうで,もうすこし情報収集してみます。

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