24をしのぐ傑作「Battlestar Galactica」

24の5シーズン目が先週始まった。
「You gotta trust me(ハァハァ)」
のJack Bauerさんのあれであるが、今回のシリーズはものすごいらしい。今朝の朝刊の記事でも、「評価も視聴率も絶好調」と書いてあったし、近くに住んでいる友人たちも軒並み絶賛。
「シーズン1は、途中で飽きて結局最後まで見られなかった」
とか、
「今まで一度も24を見たことがない」
という人まで、
「固唾を呑んで見入った!」
とのこと。請うご期待。 (私はDVDが出てから見ることにします)

Galacticaが、しかし今日の話題は、私が最近はまっている別のテレビシリーズBattlestar Galactica。Sci-fi channelというオタクチックなSF局の番組だが、その高度なストーリーラインで、
「テレビドラマシリーズの歴史上トップ5に入る」
という評論家もいるくらい。SFに限らず、全ドラマを母集団として、です。

というのも、耳がとがったり、脳みそが額から透けている生物が一つも出てこない、大人のSFなんである。

Galacticaは、元々1970年代のテレビシリーズで、当時もそれなりに好評だったが、あまりに莫大な制作費がかかり(多分、その割にあうほどには好評でなかったため)短期で打ち切られたもの。今やっているのは、そのリメイク版。

『地球そっくりの星Capricaでは、人間による高度な技術が発展していた。しかしその人類は、自らが作り出したサイボーグ、Cylon(サイロン)からの核攻撃を受け壊滅する。攻撃を免れたのは、たまたま宇宙を航行中の戦艦Galacticaと、同じく宇宙にいた客船のみ。生き残ったのはわずかに5万人。残された人々は、遠い昔に先祖が移住していったという伝説の惑星「Earth」を探して旅に出る。』

というのがセッティング。このあたりは、シーズン1に先駆けて作られたミニシリーズで語られる。

その後、Galacticaと、Galacticaに守られた最後の人類を乗せた艦隊は、Cylonの攻撃をかわしながら、本当に存在するかどうかも疑わしいEarthを探し出すことを唯一のよりどころとして宇宙を彷徨っていく。しかし、Cylonからの攻撃は外部からだけではない。最新バージョンのCylonは人間そっくりのhumanoid modelで、人類の艦隊の中にスパイとして巧妙に送り込まれている。その中には、自らがCylonと知らないま人間と行動を共にする「Sleeper Agent」もいる。

ストーリーの底には、常に政府と軍部の間の緊張がある。政府をつかさどる大統領、軍部を統率する司令官、そのいずれも、強い倫理観と使命感、高い能力をあわせもつ優れた人物だが、戦時下という非常時において、往々にしてその意見は食い違い緊張が走る。大統領は、物静かな女性だが、思いがけない強さで軍部と対等にやりあう。しかし、彼女は末期癌に侵されており、余命いくばくもない。

一方、時として捕まる人間型Cylonは、「魂を持たない機械」として「it」と呼ばれ、人類から激しい拷問を受ける。しかし、Cylonは
「神は人間を見放した。そして我々Cylonを作った。我々こそが、「神」の御名において戦っているのだ」
と告げる。
(このあたり、イスラム系テロリストとアメリカとの戦い風。)

Galacticaの軍部の描写は、本物の軍隊のルールをかなり緻密に取り込んでいる。兵器を管理する指揮命令系統と、戦闘部隊の指揮命令系統が別になってたりとか。これは、実際の海軍もそうなっていて、しかもそれは18世紀のイギリス海軍から続く伝統らしい。また、Cylonからのコンピュータウィルスによる攻撃を防ぐため、Galacticaにはコンピュータネットワークがなく、連絡は電話で行われる。その電話の受話器は、実際にアメリカの軍隊が利用しているモデル。(このあたり、戦争ゲーム・イギリス海軍オタクのダンナ情報)

ビジュアル的にも、非常に良く出てきている。ゴーストタウンと化したCapricaの街や、パイロットが不時着する砂嵐の惑星なども、乾いた色調で
殺伐とした感じが良く出ている。数千に及ぶCylonの戦闘機が、イナゴの大群のように攻めてくる、といった戦闘シーンもよい。音楽も、ドラムを多用した
民俗音楽調でアーティスティックだ。

・・・と、まぁ、いろいろあって、大人の鑑賞に心から堪える重厚なシリーズなのであります。

が、しかし、それにもまして私が気に入っているのは
かっこいい女がたくさん出てくる
ということだ。

「歌」や「愛」といった、わけのわからないもので人類を救うのではなく、体力や英知や奸智で物事を切り開いていく女が多数登場するのである。

SFといえば男のものということで、通常出てくる女は、殆どやることがない。

しかし、Galacticaは違う。上述の女性大統領もいい味を出しているが、前線の戦闘員としても女が活躍する。

例えば。

Starbuck:
戦闘機パイロットとして抜群の腕を持ち、反抗心に溢れた暴れ馬のような性格で、意に染まない命令には瞬時に背く。しかし、その俊敏な反射神経、ずば抜けた度胸、冷静な判断で、幾度もGalacticaの危機を救う。頑丈な体、ブロンド、くわえ葉巻がトレードマーク。司令官の死んだ息子と婚約していた過去を持つ。

Boomer:
同じく戦闘機パイロット。さらさら茶髪のアジア系キュートなオネエチャン。が、しかし、その実態は、彼女こそがSleeper Agentなのだ。(これは、ミニシリーズですでに出てくる話で、初期プロットの一部。ネタバレじゃありません)自らもそうと知らないまま軍部をかく乱。また、複数の男を手玉に取る才覚の持ち主でもある。が、自分を人間と信じ込み、人間のように感じ・考え続けていることで、Cylonと人間の間を揺れ動き、思いがけなく人間側の戦力になったりする。

No.6:
完璧な容貌・肢体と、計算しつくされた滑らかな物腰で、気絶しそうにセクシーなCylon。天才科学者ガイアスを篭絡してCapricaのコンピュータネットワークに入り込み、Cylonによる総攻撃を可能にする。さらに、その後も意外な方法でガイアスを意のままに操る。演じる女優は、Victoria’s Secretの下着ファッションショーに出たこともあるスーパーモデル。(写真は、意のままに篭絡されるガイアスとのツーショット)

このNo.6、Caprica総攻撃前の人類とCylonの停戦交渉にも出てくる。

それまで、人類とCylonの戦闘は長らく続いており、定期的に双方から代表者が1人ずつ送り込まれて停戦交渉が持たれていた。(PLOとイスラエルの交渉のようなもんです)そして、「メタルでできた、見るからにサイボーグなCylon」の登場を予想していた人類代表の前に登場するのが、超ボディコン・ハイヒールのNo.6。度肝を抜かれた人類代表が、言葉も出ずにワナワナする中
「停戦交渉はもう終わり」
とハスキーな声で宣言して去っていく。鼻血ブーである。

(このあたり、女のカーラヒルズが米国通商代表として交渉に登場し、調子が狂っている日本のお役人を想像してしまったり。)

ま、ちょっと、女の能力が高過ぎに書かれている嫌いもあるが、でもカッコイイから許す。オリジナルのシリーズでは、StarbuckとBoomerは男だったそうであるが、それを女に替えたのは大成功だ。

というわけで、I love Galactica!であります。

24をしのぐ傑作「Battlestar Galactica」」への19件のフィードバック

  1. Battlestar Galactica が Best of 2005 TV に

    Times が Best of 2005: Television を発表したんですけど、ふぉっふぉー、Battlestar Galactica が堂々の一位ですよ。
    やはり、対テロ戦争・スリーパー・自由の侵害と拷問みたいな現代アメリカの直…

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  2. おぉ、“宇宙空母”だ。↓の記事を読んだ時はホントカヨ??
    と思いましたけどホントにおもしろいんですね。
     -『宇宙空母ギャラクティカ』の最新シリーズ、絶賛レビュー
    http://hotwired.goo.ne.jp/news/culture/story/20050406205.html
    これってiTMSで買えるんですね。配信は若干遅れるようですが。
    でも観るならiPodよりデカTVだろうなあ、やっぱし。
    探したらmixiにコミュニティ出来てましたよ。会員は66名。:)

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  3. “24”シーズン5が始まりましたね。ちょっと見ましたが、確かに今までと比べて最初っからぶっ飛ばしてますから、評価は高いようです。でもあまりにも”えー!!!”という展開に”やり過ぎ感”も感じてしまいました。Jackは相変わらずだし。”Put your hands on your head!”を何回言うんだろうか?今後毎週見るのは面倒なんでDVDになったら私も見ます。
    ”宇宙空母ギャラクティカ”は懐かしいですね。Sci-fi channelのCMで知ってましたが、そんなに面白いんですね。チェックしてみます。

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  4. Battlestar Galacticaを注文してみた

    こちらの方が絶賛していた。が、しかし今日の話題は、私が最近はまっている別のテレビシリーズBattlestar Galactica。Sci-fi channelというオタクチックなSF局の番組だが、その高度なストーリーラインで、「テレビドラマシリーズの歴史上トップ5に入る」という評論家もいるくらい。SFに限らず、全ドラマを母集団として、です。 なんとなーく気になったのでAmazonを検索すると、リメークのベースとなった『宇宙空母ギャラクティカ』に混ざって『バトルスター ギャラクティカ-サイロンの攻撃…

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  5. BSG、Netflixで借りてみたいと思います。他に強ーい女性が出てくる番組では、Gena Davisが大統領を演じるCommander in Chiefと、4シーズン目でGlen Closeが警察の指揮官を演じるThe Shieldがあります。The Shieldも一度見始めると病み付きになりますが、Glen Closeの演技は昔と同じに大迫力でした。
    コメントの新しい確認手順、すごく良いですね。

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  6. Gnue-san、
    うーむ、皆さん見てるんですね。ワタシ全然記憶にないです。。。
    ゾフィーsan,
    ワタシはフロントプロジェクタで横2メートル弱のスクリーンに映してみていますが、この番組、大きいほうが絶対いいです!
    Ted Weapon-san,
    確かに、24は、Jackが「I can’t explain it now but you have to trust me.」みたいなことをいうたびに、「trustするほうがアホや、くくく」と笑ってしまって、まじめに見られないんですよね。しかし、アメリカ人って、ほんとうにこういう「一人シリアスに問題を解決するはぐれ雲」みたいなキャラクターが好きですよねぇ・・。
    Yuki-san,
    Commander in Chiefは見てみたいなぁと思ってるんですが、なにぶんにもテレビを見ないので、なかなかたどり着きません。(24もGalacticaもDVD)
    コメントは、Typepadのデフォルト機能になったみたいです。Typepadでホスティングしてもらってるのですが、Trackbackもコメントもスパムがほとんどないのが優秀・・・・。

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  7. chikaさま、はじめまして。
    『Battlestar Galactica』など、海外SFドラマが好きなファンの一人です。
    子供の頃に観ていた旧シリーズは『スター・ウォーズ』人気にあやかった、ものすごくB級っぽい作品でした。しかし、今回のリメイクはカッコイイ! 渋い! で全然違ってて驚きました。
    こんなに面白いドラマを日本で放送しないのは、勿体無いです・・・。

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  8. バトルスター ギャラクティカ #101 『33』

    サイロンの猛攻をジャンプ(分かり易く言うとワープ)で逃れてから5日。だがこの間、ギャラクティカ率いる船団には一時も休まる暇が無かった。通常、ジャンプした先は分からないはずなのに、なぜかきっかり33分後にサイロンもジャンプで追いついて来るのだ。前回のジャン…..

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  9. キント-san,
    Battlestarリメイク、かっこいいですよね。私はオープニングの曲のところでしびれちゃいます。
    では今後度も宜しく。

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  10. 24のシーズン1を先日やっとみたうつけものです。途中2ケ所、カメラが映っちゃってるのを見つけてドッチラケましたが、これってwell-knownなんでしょうか。

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  11. カメラですか?気がつかなかったなぁ・・。でも、その手のミスってよくありません?24のシーズン2か3でも、鏡にカメラが映りこんでました。これは、設定が現代だからいいけど、Gladiatorという映画では、ローマ時代なのにカメラが登場しちゃってるところもあります。

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  12. Battlestar Galactica

    先週、友人、『24(シーズン1)』のDVDを貸してくれた。DVDを借りると、どうも、その続きが気になって、というか、この展開でどうやってシーズン2を作るのだろうと、そちらの方が気になってしまって、何となくネットでぶらぶら探してみた。 すると、『24をしのぐ傑作「Battlestar Galactica」』というページを発見。 http://www.chikawatanabe.com/blog/2006/01/battlestar_gala.html もう大絶賛の嵐。ネタばれ?に近いので、最後まで…

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