日本の痴漢(2)

週末なんで、今日は予告したまま放置してあった「日本の痴漢(2)」をお送りします。
要は、「無数の痴漢との出会いを通じて、痴漢の行動原則を見抜いた」という話ですね。1)痴漢ターゲティング原則、2)痴漢逆とび原則、については、前編の日本の痴漢(1)をご覧あれ。

3)痴漢並行原則

痴漢は平行に並んでくる。

人間は、どんなに混んだ電車であっても、必ず周囲の人と角度をつけて立とうとするものだ。ごくまれに、肋骨が折れるほど混んだ電車で、思わず平行になっちゃうという災難はあるけれど、通常は、たとえ背中同士が向かい合う形であっても、ちょっと角度を変えてぴったり体がくっつかないようにするものである。

ところが、痴漢は必ず平行になるのだ。別に後ろからだけとは限らない。斜め前に、私と向きは同じで平行に立ち、後ろ手で触ってくるヤツもいた。(さすがに完全に正面から向き合う形で触られたことはないが。)
それから、

「手のひらをぴたりと静止させて押し付けてくる」

というがまず最初の攻撃であることが多い、これは本人は

「手の甲か平かわかるまい」

と思っているんじゃないかと思うのだが、その微妙なやわらかさとか温かみで、平か甲かはすぐわかるのだ。

4)痴漢無言原則

触られたらもちろん反撃する。それも、だんだん、エスカレートした反撃をするようになった。

レベル1:明らかに不快な風情をかもし出し、周囲に痴漢を知らしめる。もぞもぞ動くとか、何とか痴漢のほうを見るとか。しかし、あまりにたくさん痴漢に会っているうちに、
「こんな甘ちょろいことで許してはならない」
という決意をする。

レベル2:罵倒する。
「社員証を出せ」
「会社に電話する」
「変態」
「おとなしく触られてると思ったら大間違いだ」
とか、延々怒鳴る。しかし、このアプローチでは
「ひょえー、怖い姉ちゃんだ」
という周囲の人の白い目が私に注がれることに。これじゃまるで私が加害者だ。
もっと静かに、かつ効果的にやっつける方法はないか、ということで・・・・

レベル3:殴る・蹴る。もちろん、この場合相手が本物の痴漢じゃなかったらただの暴力。間違いないというところまで待ち、絶対に言い逃れできない状態で、バッと相手の手をつかみ、そこからビシビシと殴ったり蹴ったりするのだ。満員電車だから、あまり大したことはできないのだが。これは、非常にストレス解消になった。大人になってから初めて人に手をあげたが「悪いやつを殴る」という行為は結構カタルシス。
そのうち、仕事で嫌なことがあって落ち込んでいるときなど「今日も痴漢に会わないかな」と待ち構えるようになった。電車に乗り込むとき、わざとうつむき加減で気弱そうな表情で小首をかしげながら乗ったり。で、触ってきたらボコボコにするのである。

以上、全てのレベルの反撃に対する痴漢の反応は「無言」である。絶対に微動だにせずじっとしている。まだ20代の若い男で、私の思いがけない反撃に瞳孔が開いて硬直してる人はいた(英語で言うと、deer caught in headlight状態)。後は判で押したかのように宙を見据えたまま静止。

というわけで、「痴漢無言原則」。

・・・と、こう書くとなんだか喜劇みたいだけど、「警察に突き出す」という本来あるべき行動をとらなかったのは、「逆恨みされる」のが本当に怖かったから。相手は日常的に痴漢行為を働いている変態犯罪者ですからねぇ。

5)痴漢髪フェチ原則

というわけで、数年続いた痴漢と私のバトルだが、ある日唐突に終わりを告げる。腰まであったソバージュをばっさりショートヘアにしたのだ。(切った髪の毛が重さ1キロ以上という劇的な断髪だった。)するとその日から、きれいさっぱり、一度も痴漢に会わなくなったのである。

痴漢に会っている間はわからなかったが、痴漢にはもう一つの重要な原則「髪フェチ」があったのである。痴漢がゴキブリだとしたら、「超ロングヘア」はゴキブリホイホイの中のエサだった。

わかっていたら、もっとさっさと髪の毛を切ったのに。

6)番外編

さて、その痴漢遍歴の中で、当然特に変な痴漢にも出会った。

■スカートめくり

かなり空いて、新聞が読めるくらいの車内で、私は珍しくフレアスカートなどというものをはいていた。すると、サワサワと時折スカートが足に触れる。

「なんかへんだなぁ」

と思っていたのだが、突然お尻の上の辺りに指で下から上に「1」の字を書くような感触が!

「あっ」

と振り向くと、身長180センチ以上ある体格のよい中年男性が、両手で私のスカートをたくし上げていて、もうお尻が見えるぎりぎりまでめくられているではないか!スカートがサワサワしていたのは、彼が少しずつ少しずつスカートをたくし上げる過程で起こった現象だったのだ。

この話を会社でした時の同僚たちの反応は、

「うーん、その気持ちわかるなぁ。僕も背が高いから、女の人のお尻まで手が届かないんだよね。」(身長183センチの男性)

「だんだんちょっとずつ、ふくらはぎからひざ後ろから太ももが見えてくるっていうの、いいねぇ。」

おいおい・・・・しかし、そういう会社だったな。

■顔参加型

社会人1年目の時、朝の地下鉄で同期入社の男性3-4人と輪になって話をしていた。(空いてたのだ)すると、私の斜め後ろにぴったりと疲れた会社員風中年男性が立った。そして、私と、私のすぐ横に立っている同期男性の間に、にゅーっと首を突き出してきたのである。

私たち全員最初は無視していたのだが、私が隣の同期男性の方を向くと、この変な人の顔が目の前15センチくらいに立ちはだかっている。仕方ないので私は無理やりまっすぐ前を見たまま会話に加わっていたのだが、全員だんだん無言に。ついに逆側に立っていた同期が

「渡辺、こっちに立つ?」

と言ってくれて、場所交代。すると、変な人はチッという顔をして立ち去って行った。残った私たち全員

「なんだったんだあれ?」

と言葉を失ってしまったが、いや、なんだったんでしょうね。

■X-Files

もっと幼少のみぎり、中学生のとき、大きな安全ピンの針で痴漢の手を刺したことがある。もちろん最初は

「ちょっと突付いたら、恐れをなして退散するだろう」

と思ったのだ。ところが、突付いても突付いても手を握ってくる。(この人はじっとりと汗ばんだ手で、私の手を握ってくるというロリコン系痴漢だった。)それで、だんだん強く刺し始めた。しかし、5ミリさしても1センチさしても、びくともせずに触ってくる。痛がっている様子すらない。

「この人はもしかして宇宙人なのでは」

と、びびった。

ーーー
いや、人口密度の高いところにはイロイロな人がいるものです。本当に。

日本の痴漢(2)」への6件のフィードバック

  1. 1、2と拝見しましたが面白かったです。
    千賀さんの観察眼も然る事ながら、
    自分にもこんな文才があればなと思いました。
    しかし各扉毎に1~2人の痴漢が張り付いているという事実は驚きですね。
    実際に被害に遭われた方の言葉だけに説得力があると思います。
    ただ、矢張り神通力というか超能力というか、
    千賀さん並みの能力を持った方でも被害者になり得るんだなと思いました。
    詰り幾ら確りしてる女性(or子供)でも被害に遭う可能性はあるんですね。
    この点は重要じゃないかと思いました。
    敢えていうなら髪は短ければ短いほど良いということでしょうか?
    あと個人でストーカーや痴漢を解決する為には、
    私立探偵や警察に頼るという方法もあるようですが、
    それに伴って被害者が支払わなければならない犠牲やリスクを考えると、
    変態が変態である所以を踏まえ、変態の犯罪から個人を守るという、
    その変態を内包する社会独自の対応も必要だなと思いました。
    それにしても、都会は変な人が多いですね。怖いです。

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  2. >確りしてる女性(or子供)でも被害に遭う
    犯罪は、被害者側じゃなくって加害者が選ぶことでは・・・、うーむ。
    >髪は短ければ短いほど良いということでしょうか?
    うーん、どうでしょう?私は一旦切ってからは、このサイトの写真より短いくらいでずーっとすごしていたので、実体験としてわかりません。最近また伸ばしてますがもう日本にいないし。
    でも、とにかくロングはまずいですよ。ロングは!!

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  3. いつもながら感心するとともに、思い切り笑わせて頂きました。
    痴漢については時々考えるんですけれど、あれはどういう現象なのか、私にはよく分かってません。アメリカでも、もしあれほどの満員電車があったら、あれほど発生する類の犯罪なのか。それとも日本特有の何かが必要条件なのか。
    同僚に hentai とか chikan などの単語をなぜか知ってる変なヤツがいて、日本文化は面白いとかいうんですが、ベイエリアでは無理としても NYC で満員電車を実現できたら、アメリカでも hentai/chikan 文化(とか言うな)は生まれるんじゃないか、いや、生まれて欲しい、いやいや、生まれて欲しくない、うーむ、なんて悶々としてます。
    いずれにせよ、人間として許せませんね。
    私が女だったら、全員、警察に突き出してやって、それから民事でも訴えて、最後は本にも書いてやって再起不能にしてやる、なんて常々思ってましたが、逆恨みが怖かったと聞いて、あーなるほど、実際にはそうなんだろうなあと思いました。確かに怖すぎます。
    関係ないですけど、私、痴漢をしてみたいと思ったことは正直に一度もないですが、してみようと思ったらどういう気持ちになるか、どのくらい思い切ったらしてしまえるのか、やる手前まで真剣に気持ちを高ぶらせてシミュレーションしたことは何度もあります(笑) そして、実際にしてみたらどういう風にこの瞬間から人生が壊れるのかを夢想してドキドキしながら、どんなハイリスクローリターンやねん、ようやるなあって思ってました。
    ちなみに私はラッシュ時は必ず両手をつり革などにおいて、なにを勘違いされても冤罪にならないようにと祈ってました。

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  4. > 痴漢については時々考えるんですけれど、あれはどういう現象なのか、私にはよく分かってません。アメリカでも、もしあれほどの満員電車があったら、あれほど発生する類の犯罪なのか。それとも日本特有の何かが必要条件なのか。
    多分、アメリカだったら、被害者側が、私のレベル2・3のように、騒いだり暴力を振るったり、またはさらに進んで警察沙汰にしたりする人が多数いるので、リスク高すぎで痴漢も減るんじゃないでしょうか。
    >真剣に気持ちを高ぶらせてシミュレーション
    あんまり考えると、「うーむ、シュミレーションだけでは物足りない、一度やってみて本当はどういう感じか試してみよう」となってしまうのでは?!

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  5. 痴漢っていうのも身勝手ですよね。
    確かに髪の長い女性を見ると僕も欲情しますよ。
    髪の長い女性は魅力的に見えますのでね。

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  6. 女性の痴漢被害について。女性が安心して交通機関を利用できるようにするために、加害男性に対する罰則を大幅に強化してほしい。「痴漢冤罪についてはどうなんだ」との意見があるが、特に配慮する必要はない。実際にやっていても、やってないと嘘をつく輩が圧倒的に多いのが事実だと言えるし、真偽はともかく警察にとっては検挙率アップにもなるし、冤罪被害者がでるのはある程度やむを得ないと思う。
    「痴漢冤罪によって職も家庭も全てを失う」といった報道をよく耳にするのであるが、それはあくまで職場内及び家庭内での問題なのであり、「痴漢」という犯罪とは切り離すべきである。クビになるのはその男が無能な給料泥棒だからであり、これを機に会社が切り捨てたのであろう。離婚についても同様で、多分その男は妻を満足させるに足らないインポテンツであることに他ならないのである。
    痴漢加害者(男限定)に対する罰則を大幅に強化できれば、これら人間のクズ供を社会的に抹殺し、ゲットー(刑務所)に長期間収容することにより社会のクリーンアップを図れるのである。
    お~~~っと、我ながらまた過激なコメントをしてしまったようだわい。

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